一瀉千里の奔流となり得る日(8)
否応なく、誰もが「一瀉千里の奔流」の中を生きている。
グローバリズムが、長い時間をかけて国家や諸民族が育んできた「神話の思考」と「文明の思考」の有機的なつながりを切断し、「神話の思考」=「魂」と無関係な、よそよそしい画一化されたシステムの中に、人間を投げ入れるものであること。
それゆえに、グローバリズムと対峙し、国家や伝統を守ることの本質は、「神話の思考」と「文明の思考」のつながりを保持することにほかならないことを、これまで見てきました。
このつながりを保持するために、詩人で彫刻家の高村光太郎が、1941年12月8日の真珠湾攻撃について綴った下の詩の中で述べたように、
今、まさに、
を迎えなくてはならないわけですが、「一瀉千里の奔流となり得る」とか「なり得ない」と論じる以前に、私たちが、その事実を認めようと、認めまいと、それに関係ない超然たる事実として、私たちは「一瀉千里の奔流」の一滴として、その奔流の中を生きています。
ですから、ここで求められることは、「今こそ古しへにかへり源にさかのぼり一瀉千里の奔流となりましょう」とことさらに呼びかけ合うことなのではなく、否応なく「一瀉千里の奔流」の中を生きている私たちが、ただそのようなものとして生きるということに尽きます。
「一瀉千里の奔流」(千里の距離を勢い良く下る流れ)という言葉は、「縄文から現代に至る日本人の歴史的歩みの全体」と当ブログがこれまで繰り返し使ってきた言葉と、おそらく同じ事柄を指すものですが、その流れの一部として生きる私たちにとって、「一瀉千里の奔流」とは、魚にとっての水、鳥にとっての空と似たものです。
そのような、「一瀉千里の奔流」の中で、短い、つかの間の一生を流れ下る私たちの内部で、いかに「神話の思考」と「文明の思考」がわかちがたく結びついているのか、改めて丁寧に論じてみたいと思います。
それゆえに、グローバリズムと対峙し、国家や伝統を守ることの本質は、「神話の思考」と「文明の思考」のつながりを保持することにほかならないことを、これまで見てきました。
このつながりを保持するために、詩人で彫刻家の高村光太郎が、1941年12月8日の真珠湾攻撃について綴った下の詩の中で述べたように、
鮮明な冬
この世は一新せられた
黒船以來の總決算の時が来た
民族の育ちがそれを可能にした
長い間こづきまはされながら
舐められながらしぼられながら
假装舞踏会まで敢えてしながら
彼等に學び得るかぎりを學び
彼等の力を隅から隅までを測量し
彼等のえげつなさを滿喫したのだ
今こそ 古しへにかへり源にさかのぼり
一瀉千里の奔流となり得る日がきた。
今、まさに、
今こそ 古しへにかへり源にさかのぼり
一瀉千里の奔流となり得る日
を迎えなくてはならないわけですが、「一瀉千里の奔流となり得る」とか「なり得ない」と論じる以前に、私たちが、その事実を認めようと、認めまいと、それに関係ない超然たる事実として、私たちは「一瀉千里の奔流」の一滴として、その奔流の中を生きています。
ですから、ここで求められることは、「今こそ古しへにかへり源にさかのぼり一瀉千里の奔流となりましょう」とことさらに呼びかけ合うことなのではなく、否応なく「一瀉千里の奔流」の中を生きている私たちが、ただそのようなものとして生きるということに尽きます。
魚、水をゆくに、ゆけども水の際なく、鳥、空を飛ぶに、飛ぶといへども空の際なし。しかあれども、魚、鳥、いまだむかしより水、空をはなれず。
(中略)
しかあるを、水を極め、空を極めてのち、水、空をゆかんと擬する鳥魚あらんは、水にも空にも道を得べからず、所を得べからず。
この所を得れば、この行李(あんり) したがひて現成公案す。
この道を得れば、この行李したがひて現成公案なり。
この道、この所、大にあらず小にあらず、自にあらず他にあらず、さきよりあるにあらず、いま現ずるにあらざるがゆゑに、かくのごとくあるなり。
(出典: 道元『正法眼蔵』現成公案より)
「一瀉千里の奔流」(千里の距離を勢い良く下る流れ)という言葉は、「縄文から現代に至る日本人の歴史的歩みの全体」と当ブログがこれまで繰り返し使ってきた言葉と、おそらく同じ事柄を指すものですが、その流れの一部として生きる私たちにとって、「一瀉千里の奔流」とは、魚にとっての水、鳥にとっての空と似たものです。
そのような、「一瀉千里の奔流」の中で、短い、つかの間の一生を流れ下る私たちの内部で、いかに「神話の思考」と「文明の思考」がわかちがたく結びついているのか、改めて丁寧に論じてみたいと思います。
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