そうか、そうか。

二元的な対立を超えた場所から「事実」を語る。
みなさんは、臨済禅の中興の祖と呼ばれる白隠慧鶴という江戸時代のお坊さんをご存知でしょうか。

今年の年初に渋谷のBunkamuraで、展覧会が開かれていたようですが、下のようなユーモラスな達磨図や、



雅でたおやかな観音図や、



臨済宗の仏事で唱和される『坐禅和讃』の筆者として知られる禅僧です。
「衆生本来仏なり 水と氷の如くにて
水を離れて氷なく 衆生の外に仏なし
衆生近きを知らずして 遠く求むるはかなさよ
たとえば水の中に居て 渇を叫ぶが如くなり
長者の家の子となりて 貧里に迷うに異ならず
六趣輪廻の因縁は 己が愚痴の闇路なり
闇路に闇路を踏そえて いつか生死を離るべき」

『白隠禅師坐禅和讃』より
この白隠禅師に次のような有名な逸話があります。
白隠の寺のある村で、ある檀家の娘が妊娠するという事件が起きました。父から、だれの子かと厳しく問いつめられ、答えに困った娘は、日ごろから父が白隠を崇拝していることを思い出して、「白隠さんの子どもです」と、ウソを言ってしまいました。腹を立てた父は、やがて月満ちて生まれた赤ちゃんを抱いて白隠を訪れ、 「人の娘に子どもを生ませるとは、とんでもない生臭坊主め。さあ、この子を引き取れ」と、白隠に子どもを押し付けました。

「そうか、そうか。」

白隠は、ただ一言そう言って、子どもを引き取り、人々にののしられながらもらい乳に歩いたりして赤ん坊を育てました。

ある雪の日、いつものように赤ん坊を抱いて托鉢に歩く白隠の後ろ姿を見た娘は、ついに耐えきれなくなり、ワッと泣き出して、父に本当のことを打ち明けました。びっくりした父は、白隠のところへ行き、平謝りに謝りました。

「そうか、そうか。」

白隠は、ただ一言そう言って、父親に子どもを返しました。

(直木公彦著『白隠禅師-健康法と逸話』日本教文社刊を参考にしました。)
先日、ひとつの定点のごとくにという記事で、「足を止めている人は、ちょうど一定点のようにして、他の人々の激動を示してくれる。」というパスカルの言葉を引用しましたが、白隠の姿はまさに動かざる「一定点」のように周りの人々の「激動」を示しています。

さて、この逸話から私たちが引き出せる教訓は、決して「ぬれぎぬを着せられても、自己弁明してはならない」というものではありません。

この逸話が示す最も重要なポイントは、

二元的な対立を超えたところに、事実は自ずから現れるものだ。
あるいは、

事実とは、二元的な対立を超えるものだ。
さらには、

事実は、二元的な対立を超えた場所から語られなくてはならない。
というものだと私は考えます。

この原則は、私たちが、慰安婦問題のような、日本に着せられているぬれぎぬに対して弁明するときにも、当てはめられるべき原則だと思います。

日本側からなされる自己弁明のための努力が、新しい対立や紛糾や騒動を作り出すことがあってはなりません。

対立や紛糾や騒動を作りだしているならば、おそらく「事実」は正しく語られてはいません。

もちろん河野談話のように、安易な宥和を期待して、自虐的に事実をねじまげてしまってもいけません。

WJFプロジェクトの作る慰安婦動画は、対立や紛糾を止揚した場所から、静かに「事実」を語る動画でありたいと考えています。
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非公開コメント

No title

この記事を読んで、二元的な対立を煽ろうとする人たちには一層気をつけなければと思うようになりました
醜い言葉や差別的な言動で他者を貶めるようなところに、真実はありませんね

WJFプロジェクトさんにはこれからも変わらず、ただ歪みも濁りも無い澄み切った真実を発信し続ける場としてとても期待しています

No title

江戸時代の話が、現代までこうして語り継がれているというのは、素晴らしいことだとつくづく思います。

自称保守ブログは、相変わらず中韓叩きにいそしむ日々。
マスゴミは毎日、オリンピック開催に浮かれ騒ぐ。
平和ボケにも程があります。
時間を見つけて、政府や自民党にTPP&消費税率引上げ反対を訴えるFAXを送っています。
消費税率引上げに安倍が踏み切れば、多くの人々が目を覚ますでしょうが、一方でこのまま増税を許すこともできない。
非常に複雑な気持ちです。


No title

こんにちは

何とも良い話です。私達はよくよく二次的対立に慣れてしまってると感じます。物の考え方や視点の持ち方を変えると見えない物が見えてくる。大事な事です。

日本社会に対して無関心から何となく関心を持ち、政治的にも保守という考え方に惹かれ熱に浮かされ、気付いてみれば激しい嫌韓、嫌中になり、それらを只ひたすら、むやみに攻撃する事を保守だと思っていた時期がありました。そういう人達が支持する政党が保守政党であり、レールの上を進むように疑う事を知らなかったと思います。

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