安倍談話について(1)

そもそも「談話」とは何か。
昨日、戦後70年談話が、閣議決定され、安倍総理によって発表されました。

安倍談話の意義について、何回かにわけて、分析し評価してみたいと思います。

まず、安倍談話の内容の是非を論じる前に、そもそも「談話」なるものが何なのかという点を振り返っておきましょう。

これまで出された「談話」は下の三つです。

1. 戦後50年の1995年に出された村山談話
2. 戦後60年の2005年に出された小泉談話
3. 戦後70年の2015年に出された安倍談話


これを見て、みなさんは、不思議に思われませんか。

どうして、戦後30年や戦後40年の「談話」は存在しないのでしょうか。

戦後30年の1975年。

当時の首相は三木武夫ですが、三木総理は、1975年8月15日、「談話」を出すどころか靖国神社に私人として参拝しています。

戦後40年の1985年。

当時の首相は中曽根康弘ですが、中曽根総理は、1985年8月15日、「談話」を出すどころか靖国神社に公人として参拝しています。

ところが、戦後50年の1995年。

自民党、社会党、新党さきがけによる連立政権であった当時の村山内閣が、突然「談話」なるものを発表します。

先の大戦が終わりを告げてから、50年の歳月が流れました。今、あらためて、あの戦争によって犠牲となられた内外の多くの人々に思いを馳せるとき、万感胸に迫るものがあります。

敗戦後、日本は、あの焼け野原から、幾多の困難を乗りこえて、今日の平和と繁栄を築いてまいりました。このことは私たちの誇りであり、そのために注がれた国民の皆様1人1人の英知とたゆみない努力に、私は心から敬意の念を表わすものであります。ここに至るまで、米国をはじめ、世界の国々から寄せられた支援と協力に対し、あらためて深甚な謝意を表明いたします。また、アジア太平洋近隣諸国、米国、さらには欧州諸国との間に今日のような友好関係を築き上げるに至ったことを、心から喜びたいと思います。

平和で豊かな日本となった今日、私たちはややもすればこの平和の尊さ、有難さを忘れがちになります。私たちは過去のあやまちを2度と繰り返すことのないよう、戦争の悲惨さを若い世代に語り伝えていかなければなりません。とくに近隣諸国の人々と手を携えて、アジア太平洋地域ひいては世界の平和を確かなものとしていくためには、なによりも、これらの諸国との間に深い理解と信頼にもとづいた関係を培っていくことが不可欠と考えます。政府は、この考えにもとづき、特に近現代における日本と近隣アジア諸国との関係にかかわる歴史研究を支援し、各国との交流の飛躍的な拡大をはかるために、この2つを柱とした平和友好交流事業を展開しております。また、現在取り組んでいる戦後処理問題についても、わが国とこれらの国々との信頼関係を一層強化するため、私は、ひき続き誠実に対応してまいります。

いま、戦後50周年の節目に当たり、われわれが銘記すべきことは、来し方を訪ねて歴史の教訓に学び、未来を望んで、人類社会の平和と繁栄への道を誤らないことであります。

わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。また、この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い哀悼の念を捧げます。

敗戦の日から50周年を迎えた今日、わが国は、深い反省に立ち、独善的なナショナリズムを排し、責任ある国際社会の一員として国際協調を促進し、それを通じて、平和の理念と民主主義とを押し広めていかなければなりません。同時に、わが国は、唯一の被爆国としての体験を踏まえて、核兵器の究極の廃絶を目指し、核不拡散体制の強化など、国際的な軍縮を積極的に推進していくことが肝要であります。これこそ、過去に対するつぐないとなり、犠牲となられた方々の御霊を鎮めるゆえんとなると、私は信じております。

「杖るは信に如くは莫し」と申します。この記念すべき時に当たり、信義を施政の根幹とすることを内外に表明し、私の誓いの言葉といたします。

(出典: 外務省「戦後50周年の終戦記念日にあたって」(いわゆる村山談話)1995年8月15日)

これ以降のすべての歴代内閣は、福田内閣というただ一つの例外を除いて(情報をいただき訂正しました)、かならず、村山談話の継承を公言してきました。

橋本内閣
1996年(平成8年)1月24日、橋本龍太郎内閣総理大臣は、衆議院本会議の代表質問において本談話の今後の取り扱いを問われ、本談話の意義を踏まえて対アジア外交を進めていく旨、答弁した。

小渕内閣
1998年(平成10年)8月11日、小渕恵三内閣総理大臣は、衆議院本会議の代表質問において歴史認識について問われ、本談話の基礎の上に立って外交を行っていく旨、答弁した。

森内閣
2000年(平成12年)11月22日、森喜朗内閣総理大臣は、参議院予算委員会において「かつての戦争」についての認識を問われ、「95年の村山内閣総理大臣談話というもの、これが我が国の過去の問題についての政府としての正式な見解でございます。これに基づいて、特に周辺近隣アジア諸国とはこの精神をしっかり受けとめて、そして外交交渉を進めていくということが大事だと考えております。」と答弁した。

小泉内閣
2005年(平成17年)8月15日の戦後60周年の終戦記念日、小泉純一郎内閣総理大臣は、村山談話を踏襲した『小泉談話』を発表して、再びアジア諸国に謝罪した。

この他2001年(平成13年)10月8日、日中戦争の発端となった盧溝橋を訪れ「侵略によって犠牲となった中国の人民に心からおわびと哀悼を表明する」という談話を発表するなどアジア諸国訪問の際に度々村山談話を引用し、村山富市元首相本人に「いま村山談話を勉強しています」と語る。村山談話は特定の国名を明示していないのに対して小泉談話[3]には「中国や韓国」という国名が盛り込まれており、村山元首相は「小泉談話は村山談話よりも更に一歩踏み込んだ内容」と評価する。

第1次安倍内閣
2006年(平成18年)10月5日、安倍首相は、衆議院予算委員会で、村山談話について「アジアの国々に対して大変な被害を与え、傷を与えたことは厳然たる事実」であり、「村山談話の中で述べているように、恐らくこれは、韓国の方々あるいは中国の方々を初め、侵略をされた、あるいは植民地支配に遭ったと、それはまさに我が国がそのときの閣議決定した談話として国として示したとおりである」とし、これを1993年(平成5年)の河野談話とともに、「私の内閣で変更するものではない」と明言した。

福田康夫内閣
2007年(平成19年)11月9日、福田首相は、衆議院本会議で、村山談話と小泉談話について「政府としての認識については、平成七年八月十五日及び平成十七年八月十五日の内閣総理大臣談話等において示されてきているとおりである。」と答弁した。

麻生内閣
2008年(平成20年)10月2日、麻生太郎内閣総理大臣は、衆議院本会議の代表質問において、村山首相談話を受け継ぐのかどうか問われ、村山談話や小泉談話は「さきの大戦をめぐる政府としての認識を示すものであり、私の内閣においても引き継いでまいります。」と答弁した。

鳩山由紀夫内閣
2009年(平成21年)9月21日(日本時間22日)、アメリカ合衆国のニューヨークにおいて、中華人民共和国の胡錦濤国家主席と会談した鳩山由紀夫内閣総理大臣は、「互いの違いを乗り越えられる外交をするのが友愛の外交だ」とした上で、「村山富市首相談話を踏襲する」と表明した。

菅内閣
2010年(平成22年)8月10日、菅直人内閣総理大臣は韓国併合100年の節目に当たり、韓国に対して村山談話を踏襲した内容の謝罪談話(菅談話)を発表。しかし中国、台湾、北朝鮮などからは、村山談話はアジア全体に謝罪しているのに対し、菅談話は韓国に対してのみ謝罪している談話として批判を受けた。

野田内閣
2012年(平成24年)8月15日、野田佳彦内閣総理大臣は全国戦没者追悼式の式辞で歴代首相と同様に「先の大戦では多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対し多大の損害と苦痛を与えました。深く反省し犠牲となられた方々とそのご遺族に慎んで哀悼の意を表します」と村山談話の言葉を述べた。

第2次安倍内閣
2013年(平成25年)4月22日、参議院予算委員会で安倍晋三内閣総理大臣は「安倍内閣として村山談話をそのまま継承している訳ではない」と発言。しかし同年5月15日、参議院予算委員会で「安倍内閣として歴代内閣の立場を引き継いでいる。」「侵略や植民地支配を否定した事は一度もない」と発言を修正。首相在任前は村山談話に批判的な発言を行った事もある為、野党議員から村山談話に対する考え方を度々追及されるが、その後の国会答弁等でも歴史認識については同様に発言している。

2014年(平成26年)3月3日の参議院予算委員会で安倍は「侵略や植民地支配を否定したことは一度もない」と答弁し、歴代内閣同様に村山談話を踏襲する意向を表明。

2015年(平成27年)1月5日、安倍晋三内閣総理大臣は戦後70年の首相談話に国内外の注目が集まる中、年頭記者会見で「村山談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいます。そしてまた引き継いでまいります」と発言し村山談話の踏襲を明言した。

(出典: Wikipedia 「村山内閣総理大臣談話『戦後50周年の終戦記念日にあたって』」を一部修正し、整理しました。)

どうして、1995年に初めて、第二次世界大戦の日本の参戦と敗戦を振り返る「談話」なるものが出され、しかも、それ以降の歴代の総理大臣が、その継承を明言することが、慣例化していくようになったのでしょうか。

そのような慣例は、1995年以前にはまったく存在しなかったのですが・・・

(つづく)
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アメリカ製の安倍談話

安倍談話の原文は英語だった?
つまり、安倍談話はアメリカ人が書いた?

昔からのTheBeatles fun さんの紹介している
http://blog.livedoor.jp/bilderberg54/archives/45927288.html
上のサイトも参考になりますが、
機械翻訳でもいいので自分で英語版を翻訳すると原文が英語だったと納得できますよ。

No title

自虐史観にも構造改革にもNOですので誤解なきよう願います。

何度も繰り返しますが安倍政権擁護ではなく我々の「ポジション」にとって外国特派員協会はいずれ座視できない対象となるのではないかという話が本質です。

No title

>「左派」や「右派」の定義がよくわからないのですが

定義云々は今回の私の主張の本質ではありませんので討論するつもりはありません。
WJF氏がしばし提言する定義ではなくあくまで一般的な定義として使用しました。

誤解を招く表現であったとは反省していますが
どのような意味会いなのかは汲み取って頂きたいです。

No title

リンクが一部抜けていました。追加訂正です。
http://togetter.com/li/861800

繰り返しになりますが安倍政権擁護が私の主張の本質ではありません。

その手の外国人とツィッターで討論した経験のあるWJF氏ならば
彼らのダブルスタンダードに満ちたロジックはよくご存知でしょう。

WJF氏にとっても外国特派員協会はいずれ座視できない対象となるかもしれません。

No title

安倍政権擁護と言うわけではありませんが
https://twitter.com/catbsky/status/633620992883953664
http://i.imgur.com/m6usfSy.jpg

国内左派メディアの煽動に一部の外国人記者が洗脳・利用されてしまう。
今後の中道右派・保守政権が情報発信する上でも共通した問題だと思います。

No title

会見後の7時からのNHKニュースは安倍談話賞賛で異常でした。
あまりに異常なので解説員の名前「岩田明子」を検索してみたら
かねてから安倍に近いと噂のある解説委員でした。

公開されたばかりの談話をここまで流暢に解説して褒め称えるなんてできるものなのか?
NHKだけ、7時からのニュースでこの女性が解説するために
みんなよりも先に内容を知らされていたのか? と疑いを抱くほどでした。

会見を聞いて「結局よくわからなかった」と思った人がこの番組を見たら
「なるほど、なかなかいい内容だったのだな」と騙されたことでしょう。
(いや、今時そんな馬鹿はいないのかな…。)

英語version が先に

 「ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報」さんのブログに,英語音痴の私にでも分かるように,安倍談話が,実際,英語Version が先に考えられてから,日本語Version が作られた ことを心底信じることができる紹介がありました。
 http://blog.livedoor.jp/bilderberg54/archives/45927288.html
 やっぱり,安倍氏は,アメリカ合州国の忠実なポチであるスタッフを多数抱えており,彼らの言うことを最大限重視して仕事をせざるを得ない,という現状だということが,改めて確認できました。
 だから安倍氏は「アメリカ合州国のネオコンの奴らのようにに好き勝手言いたい」という願望が実行できない状態ということで,何か落ち着かない状態になっています。
 安倍氏は「健康上の理由」ででもなんでもいいから一刻も早く退陣して,戦争法案は一旦廃案にするという決断するのが,万民のためだと思います。

No title

福田首相のいわゆる「村山内閣総理大臣談話」および「河野官房長官談話」についての認識に関する質問主意書

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a168169.htm
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