「自然国家」日本の消滅

「右翼」と「左翼」は表裏一体。
アニメーション作家で映画監督の宮崎駿氏が、昭和史に造詣の深い作家の半藤一利氏との対談で次のようなやりとりを行っています。
半藤「わたし、ちょっとね、最近思っているんですけれどね、たとえば尖閣問題がある、あれを棚上げしたらいいと、わたしもそう思うんですけれどね、棚上げしたら将来残るじゃねーかと、ずっと残るじゃねーかと言うけど、30年も経てば、たぶん世界は国境がなくなると、わたしもね、非常に楽観的なんですよね。EUが、ああいう風にまだうまくいっていませんけれども・・・」

宮崎「EUしかないですよね。」

半藤「EUの方法しかないんです。あれが、アジアにもできるだろうと。30年も経てばですよ。そうすると、国家というものはなくなるんじゃないかと。」

宮崎「そのうち、東京も、ロンドンとかパリのようにね、半分は日本人じゃないということになるかもしれないですよ。」

半藤「それがグローバル化です。」

宮崎「そうです。グローバル化ってそういうことですよね。」

半藤「もっとね、人類はそのぐらいのでっかい視野をもったほうがいいんじゃいないかというんですが、お前も相当年をとったねと言われるんです。」

「国家などなくなった方がよいのだ」という考えを共有するこの二人は、国家や国境が消滅していくグローバル化について、そこに人類の唯一の希望と活路があるかのように、楽しそうに笑いながら話していますが、まったく笑い事ではありません。

「30年も経てば国家がなくなる。」

夢想でも、絵空事でもなく、まさに、そのような世界が着々と実現しつつあります。

日本のTPP参加が決まれば、30年後には、文字通り、日本という国家は消滅しています。

もちろん「日本列島」という島は残るのですが、その島の上に暮らすのは、もはや「日本人」ではなく、様々な人種によって構成されるグローバル連邦の市民たちです。

しかも、皮肉なことに、宮崎駿氏のような「左翼」の立場の政治家によってではなく、安倍晋三や自民党という、「保守」や「愛国」を標榜する「右翼」の立場の政党や政治家によって、日本という国家の消滅が画策されているのです。

そして、「愛国心」に突き動かされている「はず」の右翼の大衆層が、熱心に安倍政権を支持することによって、自分たちの国家の消滅に加担するという、奇怪な現象が、私たちの目の前で展開されています。

この「愛国的」な大衆層はすっかり洗脳されており、「国がなくなるんだぞ」とどんなに声を荒げて説明しても、グローバル化やTPPの意味を理解しようとはせず、安倍政権や自民党を支持することをやめようとはしません。

彼らは、「左翼」が「反日」的な悪の勢力である一方で、「右翼」である安倍政権や自民党は「愛国」的な善の勢力なので日本を守ってくれると信じていますが、皮肉なことに、「右翼」の安倍政権が、「国家などなくなった方がよい」という「左翼」の人たちの理想を実現させようとしているのです。

どうして、こんな奇妙なことが起きるのか。

次の点を考慮に入れれば簡単に理解することができます。

今、私たちが直面しているのは、縄文の森の中から長い時間をかけて立ち上がってきた「自然国家」である日本の終焉です。

一方、世界の大半を占めるのは、革命や戦争や入植や植民地政策の終焉によって創り出された「人工国家」です。(アフリカ諸国の不自然で直線的な国境線を見れば「人工国家」の意味がお分かりになるでしょう。)

革命によって生まれたのは、ソ連や中華人民共和国のような、共産主義の国だけではありません。

アメリカやフランスのような、資本主義の国も、革命によって生まれた「人工国家」なのです。

従って、「自然国家」としての日本のあり方に反するという意味で「反日」的なのは、旧共産圏の国々や左翼だけでなく、アメリカやフランスのような西側の資本主義の国々、またその陣営に傾斜していこうとする右翼も同じです。

だから、左翼や共産主義だけが「反日」だと誤解をして、右翼や資本主義に強く傾斜していけば、「自然国家」である日本の否定や解体につながっていくのは、理の当然です。

「自然国家」としての、日本の特殊な運命を守っていくためには、他の「人工国家」に国家の規範を求めるのではなく、日本自らの歴史の深い内奥に、日本という国家の根拠とその本来あるべき形を求めていかなくてはなりません。

13日早朝(日本時間)のアメリカ議会下院で、「TPA」(大統領貿易促進権限)という、アメリカ議会がアメリカ大統領にTPPの交渉権を認めるか認めないかの採決が行われました。「TPA」そのものは可決したのですが、「TAA」という、自由貿易促進によって生じる失業者を支援するための関連法案が否決されたため、「TAA」と抱き合わせになっていた「TPA」は実質的に廃案となりました。

しかし、来週「TAA」の再採決が取られるということで、ロビイストたちによる熱心な説得や懐柔策により、採決が覆る可能性がないわけではありません。

下院議員たちが、有権者に対するポーズとして、一回目の採決で反対したり抵抗したりするふりをした可能性だってなきにしもあらずです。

腹立たしいのは、TPP参加によって日本という「自然国家」が消滅してしまうにもかかわらず、安倍政権が、わざわざロビイストたちを雇って、TPPに反対するアメリカの議員たちがTPA法案に賛成するように働きかけていることです。

日本政府が米ロビイスト起用-TPA可決に向け議会に働き掛け

日米などが参加する環太平洋連携協定(TPP)交渉の妥結には、米議会での大統領貿易促進権限(TPA)付与法案の可決が前提条件となる。同法案には与党民主党議員を中心に懐疑的な姿勢が目立つため、日本政府は米国のロビイストを起用してこうした議員を説得、可決を後押ししようと努めている。

日本政府のこのような取り組みを米国で指揮しているのは法律事務所アキン・ガンプ・ストラウス・ハウアー・アンド・フェルド 。日本はこのほか、長年にわたり民主党の政治資金調達を担当してきたトニー・ポデスタ氏率いる「ポデスタ・グループ」、同党上院院内総務を務めたトム・ダシュル氏の「ダシュル・グループ」など強力な政治的コネを持つロビイストやPR会社の力も借りている。

TPAはファストトラックとも呼ばれ、大統領が貿易交渉権を持ち、合意すれば議会に修正を認めず一括で賛否を問える権限。上院は今週、TPA付与の法案を審議する予定だ。ロビイストは議員やその主要スタッフらに接触し、新聞の意見記事掲載やカリフォルニア州の綿花農家、ワイン醸造業者への働き掛けを含むキャンペーンも展開している。

アキン・ガンプのパートナーのスコット・パーベン氏は電話インタビューに対し、日本の当局者が「日本の優先課題は何か、日米関係がなぜそれほど重要なのかといった問題について米国の政策立案者、利害関係者に理解してもらうため、一丸となって取り組む必要がある」と説明した。当局への届け出によれば、同事務所は2014年8-12月に日本から38万8000ドル(現行レートで約4700万円)の支払いを受けた。

(出典: ブルームバーグ 2015年5月21日)

水島さん、安倍晋三は、アメリカに脅されて、レイプされた女性のように、いやいやTPP交渉に参加したのではなかったのですか?

どうして安倍政権は、ロビイストまで雇って、わざわざTPPに反対しているアメリカの議員の説得に奔走しているのですか?
【直言極言】安倍支持とTPP絶対反対[桜H25/3/22]より

今まで縷々例を挙げながら、話してきました。たとえば、一つ、これも前に言ったと思いますけれども、ちょっと汚い言葉ですけれども、力のないか弱い女性が、とんでもない暴力大男にレイプされていると。俺の言うことを聞かなければ殺してしまうぞ。首も絞められた。そうしているとき、私たちはどうしたらいいか。普通は、横にいる人は、やめさせるように一緒になって女性の味方をして、やめさせるようにする。そんな犯罪やらせてはいけないわけです。ところが女性が、もう殺されるのはしょうがないから、こんな力のある男にレイプされてしまう、こういうのは仕方がない。命あっての物種だという形で、仕方なく首を絞められたあげくに、力を抜く。叫び声をあげるのをやめる。殺されるよりはということで。としたとき、横に立っていた、それを見ていた男が、「なんだお前は、本当はレイプが好きなんじゃないか。結局お前は売女なんだ。売女。しっかりしろ。操を守れ。」こういう言い方をして、怒りまくっていると、言うような例を前にもあげたわけであります。これが日本政府、安倍政権と、アメリカの政権という言い方にあまりに当てはめるのは乱暴かも分かりませんが、原理と現実、このことを私たちははっきり分けなければいけないということを言ってきたわけであります。

(参考記事: WJFプロジェクト「批判的に聞く(5): 【直言極言】改めて、安倍絶対支持とTPP絶対反対[桜H25/3/22]」2013年3月23日)

日の丸を振り回して、「愛国だ」「保守だ」「靖国だ」「英霊だ」と騒ぎながら、こういう嘘つきの言葉を鵜呑みにして、日本の国家の消滅に加担しているバカタレどもは、とっとと地獄に落ちればよいし、TPPに対して強い反対の声を上げない、一般の日本国民も、いい加減にしろと思います。

「右翼」にせよ、「左翼」にせよ、戦後の日本人が、日本という自然国家の破壊と解体に加担してしまうもう一つの要因は、日本人自身が、「国家」という言葉の意味を深く理解していないこともあります。

日本人は、明治維新によってつくられた近代的な国家観以外に、日本という「国家」を規定する思想を持ちません。

この明治体制的な国家観を肯定すれば、「右翼」が生まれますし、これを否定すれば「左翼」が生まれます。

しかし、日本が「国家」であるということの意味は、明治政府が、西洋の国民国家の概念を導入することによって生み出した近代的な国家観より、はるかに深い意味をもつものです。

その本来の深い意味での日本本来の「国家観」を知れば、日本人は右翼や左翼に分かれて争う必要は初めからないことに気づくはずなのです。

この点は、「グローバリズムと神道」でも取り上げてきた問題ですが、今後さらに深く論じていきたいと思います。
*
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仕事は憧れてるんですが、

宮崎さん、アニメーションの仕事は憧れてるんですが、グローバル、新自由主義、TPPなど、どのような意味、内容なのか、まるで調べもせず確かめず、知識人ぽく語るのはヤメて欲しいです。
ジブリの宮崎さん高畑さんは大昔の知識で止まっているし、大昔も本気で左翼やってたら,安倍自民の後ろがアメリカで・・と、気づくはずで、TPPやグローバルの危険な騙しに気づくはずで、
TPPやグローバルなど、そんなとんでもない事誰が押し進めていたか調べ出すはず。
EUってのも、とってもマズいものなのですが、陰謀話になるので此処では止めますw

彼ら左翼と言うより、綺麗ごと言いたいだけな気さえしてしまいます、
無知すぎます。

グローバルって言葉尻の綺麗さに騙されて、世界中の人達が仲良く協力することだと思ってるのではないか?
貴方達みたいな人を騙す為に「グローバル」とか新「自由」主義とか聞こえの良い名前にしたと言う事に気づいて。
戦争反対って言っても、どうして安倍自民が戦争へ突き進む理由を考えたことがあるのか?

宮崎高畑さんはTPP、新自由主義反対の左翼の人達に人気有り、時々政治家に〜との声もありますが、
止めて欲しいです。
発言力あり社会に声が通る人達なので、知って欲しい、気づいて欲しいのですが・・・。


>日本政府が米ロビイスト起用-TPA可決に向け議会に働き掛け
知りませんでした・・呆れました。そこまでやってましたか。
膝が折れ、ヘナヘナ〜〜って気分です。

No title

欧州諸国では反グローバリズム政党が勢力を拡大(ギリシャ『黄金の夜明け』やフランス「国民戦線」)していることをこのお二方はご存知無いようで。
半藤一利といえば「戦前の日本人はバカだった」と言ってたのも思い出されます。
腹立たしいこと極まりないですが、こんなことで腹を立てずに「国家」を残すため行動することが賢いでしょうね。
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