日本国憲法は、本当に「悪」か?

マッカーサー打電と、象徴天皇制。
下はコメント欄で述べたことを、少し編集して、記事にまとめたものです。

GHQを統括するマッカーサーに対して、アメリカ本国やオーストラリアなどの連合国から、天皇を戦犯として裁判にかけて処刑するように圧力が加わっていた中、1946年1月25日、マッカーサーは天皇制の維持を説得するために、アイゼンハワー陸軍参謀総長に次の打電を行いました。

"His indictment will unquestionably cause a tremendous convulsion among the Japanese people, the repercussions of which cannot be overestimated. He is a symbol which unites all Japanese. Destroy him and the nation will disintegrate."

「天皇の告訴が、日本国民の間に、とてつもない動揺を引き起こすことに疑いの余地はなく、また、その影響は計り知れない。天皇はすべての日本人を一つにまとめる象徴である。天皇を滅ぼせば、国が統合を失う。

(出典: 「マッカーサーからアイゼンハワー陸軍参謀総長への打電」1946年1月25日)


さらに次のようにも述べ、マッカーサーが、多少誇張を交えた表現で、天皇を戦犯として裁かないように本国を強く説得していた様子が伺えます。

「連合国が天皇を裁判にかければ、日本国民の憎悪と憤激は、間違いなく未来永劫に続くであろう。復讐の為の復讐は、天皇を裁判にかけることで誘発され、もしそのような事態になれば、その悪循環は何世紀にもわたって途切れることなく続く恐れがある。政府の諸機構は崩壊し、文化活動は停止し、混沌無秩序はさらに悪化し、山岳地域や地方でゲリラ戦が発生する。私の考えるところ、近代的な民主主義を導入するという希望は悉く消え去り、引き裂かれた国民の中から共産主義路線に沿った強固な政府が生まれるだろう。そのような事態が勃発した場合、最低百万人の軍隊が必要であり、軍隊は永久的に駐留し続けなければならない。さらに行政を遂行するためには、公務員を日本に送り込まなければならない。その人員だけでも数十万人にのぼることだろう。天皇が戦犯として裁かれるかどうかは、極めて高度の政策決定に属し、私が勧告することは適切ではないと思う」

(翻訳は、西鋭夫『國破れてマッカーサー』より引用)


このように、

「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、」


とする日本国憲法第一条の条文は、

天皇制を廃止せよという強い意向をもっていた連合国やアメリカ本国、また戦後の国際社会に対して、日本が天皇制を維持することに理解を示すように、マッカーサーが天皇制を弁護する文脈の中で生まれたものであり、天皇制を否定したり、破壊するために作られたものではありません。

天皇を戦争責任の糾弾から守り、戦後も日本が天皇制を維持していくために、日本国憲法の制定は不可欠な手続きでした。

昭和天皇御自身は、どう答えられたか。

「最も徹底的な改革をするがよい。たとえ天皇自身から政治的機能のすべてを剥奪するほどのものであっても、全面的に支持する」

(出典: 幣原平和財団編『幣原喜重郎』)


と、当時の総理大臣であった幣原喜重郎に答えられたと記録されています。

昭和天皇が、御名を記し、御璽を押されて、天皇陛下の名によって、次の勅語と共に、1946年11月3日に公布されたのが日本国憲法です。

「本日、日本国憲法を公布せしめた。この憲法は、帝国憲法を全面的に改正したものであつて、国家再建の基礎を人類普遍の原理に求め、自由に表明された国民の総意によつて確定されたものである。即ち、日本国民は、みづから進んで戦争放棄し、全世界に、正義と秩序とを基調とする永遠の平和が実現することを念願し、常に基本的人権を尊重し、民主主義に基いて国政を運営することを、ここに、明らかに定めたものである。朕は、国民と共に、全力をあげ、相携へて、この憲法を正しく運用し、節度と責任を重んじ、自由と平和とを愛する文化国家を建設するやうに努めたいと思ふ。

(出典: 「昭和天皇による日本国憲法公布の勅語」1946年11月3日)


今上天皇も、日本国憲法を重んじるという姿勢を一貫して表明されています。

昭和天皇のご聖断を否定し、先帝陛下と今上陛下と共に、国民が70年間築いてきた戦後という時代を全否定して、ちゃぶ台返しをし、日本国憲法は無効だと言って、現行の国家体制を壊し、戦後築いてきた国際社会における信頼も捨てて、大日本帝国憲法を復活させれば、それは革命です。

日本の国内だけでなく、世界中が大混乱に陥ります。

今必要なのは、そのような極端で偏った意見を掲げて少数派を形成することではなく、右翼も左翼も日本人が一つにまとまることです。

日本国憲法を支持することは「左翼だ」という意見がありますが、共産主義者が日本国憲法を支持し続ける限り、彼らは天皇制を廃止することはできません。

「その(天皇の)地位は主権の存する日本国民の総意に基く」


と、日本国憲法第一条が宣言しているからです。これは、「国民の意思次第で天皇の地位はどうにでもなる」という意味ではなく、「天皇の地位をすべての日本人が認めてきた」という歴史を超えた事実を表明した言葉です。

日本国憲法第一条の前半が

「天皇はすべての国民を一つにまとめてきた」


と述べ、日本国憲法第一条の後半が

「すべての国民が天皇の地位を認めてきた」


と述べているとすると、これは「君臣一体」の国体思想を、国際社会が納得しうる表現で、言い直したものにすぎないことがわかります。

「主権」の所在が、天皇の側にあるのか、国民の側にあるのかは、日本の長い歴史を振り返れば、大きな違いではありません。天皇が直接政治に携わらなかった時代の方が、日本の歴史においては、はるかに長いからです。

共産主義者が天皇制を廃止できるのは、彼らが忌み嫌う「憲法改正」を行った時です。ところが彼らは「憲法改正」を嫌っていますから、天皇の地位は安泰です。

日本国憲法はこのように、天皇制を廃止するどころか、力強く守っています。

ソ連の台頭と中国の赤化によって、GHQによる日本の占領統治時代に、対日戦略の変更を余儀なくされたアメリカ自身にとって、日本国憲法は既に邪魔なものになっていました。日本に武力の放棄をおしつけたマッカーサー自身が、朝鮮戦争では日本に再武装を求めたぐらいです。CIAの資金援助によって作られたことが、機密解除されたアメリカの公文書から明らかになっている自民党は、結党のはじめから憲法改正を党是にしています。

ということは、日本国憲法は際限のない対米隷属から日本の独立を守る最後の砦であるということです。グローバル化と構造改革によって日本を破壊しようとしている安倍政権が憲法改正をもくろむ以上は、日本国憲法を保守することこそ、日本という国家を保守することにつながります。日本国の独立を維持する、その最後の砦を、日本人自身が手放すような愚かなことをしてはなりません。

愛国保守なら日本国憲法を否定しなければならないとか、愛国保守なら原発推進を批判してはならないとか、安倍晋三に盲目的な支持を煽り立ててきた特定勢力に、知らず知らず刷り込まれたドグマを、私たちは一旦リセットする必要があります。
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日本文明の根底に横たわる共産主義的なものについて

興味深い本の紹介ありがとうございます。

アマゾンのコメント欄によれば、社会主義者の集まりであったOSS(戦略情報局)が、日本の戦後計画を立案したということですが、これについて一言述べてみたいと思います。

そもそも共産主義や社会主義は、ロシアの帝政、フランスの絶対王政、中国の皇帝制のような、一元的な絶対君主制に対するアンチテーゼとして生まれたものですから、絶対君主制にとっては明らかに、不倶戴天の敵であり、脅威ですが、後醍醐天皇による建武の新政のような例外を除き、明治維新以前の日本の伝統的な天皇制が、それら諸外国の絶対君主制とおなじものであったかといえば、決してそうではないと思います。

ということは、共産主義は、日本にとってのアンチテーゼ(「反日」)にはなりえないものだと思います。

このことは縄文時代の日本を想起すれば最も明らかです。

縄文時代の日本にとって共産主義が脅威になりえるかといえば、まったく脅威にはなりえません。

なぜなら共産主義が打倒しようとする相手がまったく存在せず、共産主義者が拳を振りかざして革命を叫ばずとも、人々がそもそも原始共産主義的な暮らしを初めから謳歌していたからです。

共産主義者たちが、縄文人たちに共産主義革命をアジテートしている姿を想像してみてください。縄文人たちは「お前何言ってんの」と、口をぽかんとあけて、呆れた目で共産主義者たちを見つめたことでしょう。

では弥生以降の日本はどうなのか。

政治的な権力は強化されたであろうけれども、縄文的な要素が、その後の日本社会から排除され、払拭されたかといえば、実際の日本社会は、弥生時代以降も,縄文的な野生の色合いを強く残していました。

だから、一元的な諸外国の絶対君主制とは対照的に、日本は、太政官政府や幕府が司る政治の「権力」と、天皇が司る自然に根ざす「権威」の、二元的な構造を歴史を通じて常に維持してきました。

それが、日本が「自然国家」とよばれる所以です。

日本が「自然国家」であり、日本文明の根底に縄文文明が存在するということは、日本文明や日本社会の根底にははじめから共産主義的なものがセッティングされているということを意味します。

日本文明の根底にははじめから共産主義的なものがセッティングされているということは、共産主義は日本人にとっては脅威なのではなく、釈迦に説法であり、不必要なものであるということです。

明治維新以降に、共産主義が日本にとっての脅威であるとみなされるようになったのは、明治体制が、西洋の絶対君主制を模倣したためです。

明治憲法が、プロイセン憲法を模倣したことに、そのことははっきりと現れており、明治維新以降の天皇制は、従来の天皇制から大きく逸脱したものとなりました。

絶対君主制というテーゼのないところには、共産主義というアンチテーゼも成立のしようがないものであると思います。

縄文人のスピリットを根底にもつ私たち日本人は、縄文人が共産主義者たちを見つめただろうまなざしと同じ目で、共産主義を見つめるべきです。

日本の共産主義者たちは、日本文明の根底に共産主義的なものが初めからセッティングされていることに気がつけば、「なーんだ、共産主義なんか日本にいらないじゃん。むしろ日本の古来からの伝統を守る保守的な姿勢をもつことが、平等な社会の実現と維持につながるじゃん。解散、解散」ということになりますし、日本の右派の人々も、縄文時代の頃から、日本文明の根底に共産主義的なものが維持されてきたことに気づけば、共産主義的なものを嫌悪して、かえって、日本の伝統的な文明や社会のありかたを破壊するという愚行をおかさずに済むと思います。

参考記事:
右や左の彼方にある本当の日本
http://wjf-project.info/blog-entry-232.html
明治天皇制と産業資本主義の結合
http://wjf-project.info/blog-entry-233.html
従来の「保守」概念と、本来あるべき「保守」概念
http://wjf-project.info/blog-entry-241.html

この本によると、「天皇のシンボル化」はマッカーサー以前からの決定事項であった様です。
https://www.amazon.co.jp/dp/4886563619/

不要不急の憲法改正

自民党の憲法改正草案を批判する掲示板を見ました。するとその中に改憲の条件として天皇制の廃止を主張してた人がいました。自民党はその為に、憲法改正を急いでいるのでしょうか?

皇室を潰すそうとしている勢力がいる中で憲法改正論議を起こせばかえって利用されてしまうのは目に見えています。本当の保守ならば日本国憲法を押し付け憲法として否定するのではなく、守るべきものは護り不要不急な改憲は避けるべきです。

そういえば最近、安倍は皇室を軽んじすぎていると思います。今度、ジンバブエのムガベ大統領が来日し、天皇陛下と会見をされるそうです。かつて、安倍は民主党が1か月前ルールを破ったとき、「日本の権威である皇室の権威が利用されている」と言ったそうですが、世界最悪の独裁者と言われているムガベ大統領を陛下に合わせて何をしようとしているんでしょうか?とても不安です。

バラマキさん

>反中嫌韓脱米を邪魔するのが憲法9条
>日本国憲法を護持する限り、アメリカ様の言いなり。


ご指摘の通り、アメリカ様のいいなりになっている枠組みの中で、憲法いじっても、アメリカ様のいいなりの新しい属国憲法ができるだけです。対米隷属がこれまで以上に強化されるだけです。そもそも憲法改正はアメリカの要望なのですから。

かといって、大日本帝國憲法を復活できるかといえば、現実の問題としてそんなことが可能なわけがないし、いろいろな問題を抱えていた明治体制を復活させることがよいことだとも思わない。

左翼の人たちのように、明治体制のすべてが「悪だ」 とはいいませんが、右翼の人たちのように、明治体制をことさら理想化する気にもなりません。

「アメリカと最終戦争を戦って、全世界が天皇に帰属する八紘一宇の理想を実現しなくてはならない」(石原莞爾の最終戦争論)などとする、頭のおかしな右翼の言説に日本人はブレーキをかけられなかったし、それに異を唱えれば「非国民」と呼ばれて弾圧された。それは、大日本帝國憲法下で起きた厳然たる事実です。その事実を指摘することは「自虐史観」でもなんでもありません。

ならば、憲法9条の枠組みの中で、個別的自衛権を行使するための防衛力を今以上に増強すればよいだけのことではありませんか。

>WJFさんは2009年に民主党に投票し

2009年の春先からYouTubeで活動を始めて、「民主党に投票してはならない」と呼びかけていました。(自民党も民主党も所詮同じ穴のムジナであったとすれば、それが正しかったのかどうかは、今の私にはわかりませんが)

下の動画のオリジナルは2009年の6月ごろに作ったものですが、すでに民主党の外国人参政権も、自民党の1000万人移民計画も共に批判しています。

https://www.youtube.com/watch?v=FHwLx_JRo_k

大日本帝国憲法は悪か?

WJFさんの悪いところが出ましたね。

反中嫌韓脱米を邪魔するのが憲法9条
日本国憲法を護持する限り、アメリカ様の言いなり。

改憲→自主防衛体制を邪魔するのが、特定亜細亜勢力と親米保守※ユダヤ様の両建て

国体護持を保障するのは日本民族
「日本国憲法」は、外国の為に日本人を制限する仕組み。

自分の独断と偏見では
WJFさんは2009年に民主党に投票し、中国韓国をディスる三橋を恨み、自民党抵抗勢力否定しておきながら構造改革の新自由主義を否定するタイプ。




ひねくれ者になろう

現憲法に対する考えは単純でいいいんです。それを表現するのに便利なことわざがあります。

「転んでもただでは起きるな」

転んだら(敗戦)素直に起き上ってはいけないんです。転んだ状況を自らの利益に利用するんです。ひねくれ者になりましょう。よくマスメディアで紹介される「面白人生」みたいなものがあるじゃないですか。大体、ビジネスやスポーツで成功してる人って、どこかで発想の転換をしています。そりゃそうです、人と同じことをしていたら成功するはずないですから。ひねくれ者なんです。褒め言葉です。日本国民総ひねくれ化するんです。

戦後の再武装について、2002年8月14日に放送されたNHKスペシャル『海上自衛隊はこうして生まれた』が下で視聴できます。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm19052217

一貫して日本側からの働きかけが切っ掛けということになっていますが、Y委員会がアメリカ側に接触するに先立ち、東京裁判で起訴されたわずか二人の海軍軍人の一人、嶋田繁太郎が死刑判決を免れています。(もう一人の永野修身は獄中死)

No title

こちらの動画を御覧ください。

「WJFプロジェクト」でツイッター検索してみた! (1:25) http://nico.ms/sm25878633 #sm25878633

安倍信者達がWJFプロジェクトさんを敵視しているのが明らかなことが分かります

No title

こちらの動画も参考に、ご覧くださいませ。
nico.ms/sm25867632 #sm25867632
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