グローバリズムと神道(9)

地祇たちの反逆、日本史の抱える「重層性」(3)
『古事記』や『日本書紀』などの日本神話に描かれる「八百万神等」(やおよろずのかみたち)を構成する、「天津神」と「国津神」の「重層性」。



「天津神」と「国津神」、この二つのグループの神々は、下の図のような、二方向からの力を象徴しており、



この二つの力は、単に相反する方向からぶつかり合って、互いを打ち消しているのではなく、東洋思想における「陰陽」概念を表す太極図のように、互いを補完しあい、重なり合いながら、渾然と一つに混ざり合っており、

なおかつ、この二つの力は、8世紀初頭の中央集権制の確立ののちも、日本の内部に残存して、日本の歴史や社会をその内側から動かしていったと、前回までに述べました。

では、どのように、「重層性」をなしつつ、互いを飲み込みながら、渾然と混ざり合うこの二つの力は、その後の日本の歴史の中で働いてきたでしょうか。

思い出していただきたいのは、8世紀初頭に律令制が確立されたその直後から、中央集権制が崩れ始めていった日本史の概略です。

おおざっぱにまとめれば、荘園の増大によって、朝廷による中央集権の力は弱められ、それと同時に、地方勢力が勃興していきました。

やがて地方勢力を武士たちが司るようになり、中央が地方を支配する中央集権制から、地方の各勢力が契約関係の下で一人の君主の下に忠義を誓って結集する封建制の時代へと移り変わり、「政治」の力は、朝廷から幕府に委譲され、朝廷は文化や祭祀を司る「非政治」の領域に退避するようになりました。

それは、まるで、「天津神」の勢力によって「国譲り」を求められ、「顕世」(うつしよ)を治める「政治」から身を引いて、「幽世」(かくりよ)を治める「非政治」の領域に退避した「国津神」のもつ土着の力が再び勃興し、記紀に描かれた「国譲り」と逆方向の、「天津神」から「国津神」への「国譲り」が行われたかのようなプロセス、そのプロセスを、律令制確立後のおそよ1000年もの時間をかけて、ゆっくりと日本はたどったということになります。

奈良時代から江戸時代までのこのプロセスは、「国津神」(土着の力)による長い時間をかけた一種の反逆とも言えるわけですが、ここでも、「天津神」は廃絶されたり、駆逐されたりしたわけではなく、国に統一をもたらす「天津神」の力と、「国津神」たちの土着の力は、常に日本史の各時代において並存を続けました。

カンのいい方ならお分かりのように、国家に統一をもたらそうとする「天津神」の力と、地方や民衆の土着の力の象徴である「国津神」の力が並存するところに、日本という国の本質があるわけですが、現代の「右翼」や「左翼」といった外来のイデオロギーは、この日本の本質にそむくものです。

「右翼」は、国家に統一や秩序をもたらす「天津神」の力を高く称揚する一方で、「国津神」のもつ土着の力、民衆の力、根底からの力、下からの力、底辺からの力を軽視します。

一方、「左翼」は、下からの力、「根の国・底の国」に属する、底辺の民衆のパワー、すなわち「国津神」の力は尊びますが、皇室や、社会に統一や秩序を与える、高みにある「天津神」の力を軽視します。

そして、この二つの立場は、互いに相手を全否定して潰しあうことに憂き身をやつす。

これは、「天津神」と「国津神」が並存してきた日本の本質と真っ向から相反するものです。

WJFプロジェクトが掲げる「多元的保守思想」とは、「八百万神等」を崇めてきた日本人の古い信仰に立脚しようとするものですが、これまで幾度か述べてきたように、これは単に「八百万の神々に象徴される多様性を仲良く認めましょう」という平板な寛容の勧めではなく、「八百万の神」には、「天津神」と「国津神」という二つの陣営があり、この二陣営は一見対立しあうが、常に併存し互いを包摂し合う。この二陣営の「相互補完性」と「重層性」こそが、古代以来の日本の本質であり、この本質を保持することが、日本を「保守」することなのだ、という主張です。

「右翼」も「左翼」も、天地二つの陣営を完全に切り分け、その「重層性」と「相互補完性」を否定し、相手側勢力を殲滅しようとしている点で、日本の本質を破壊する「反日」以外のなにものでもありません。

次回は、伊勢と熊野という二つの土地の神社に着目して、「天津神」と「国津神」の力の転換のプロセスをもう少し丁寧に辿ってみます。(つづく)
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