人が嘘をつく瞬間
同じ詭弁が使われた。
下の動画は、2013年3月1日、安倍晋三によるTPP交渉参加表明が行われるちょうど2週間前に、三橋貴明が「TPPに関する報道はマスコミの飛ばし」ととぼける瞬間を捉えた貴重な映像です。(41分〜)
上の三橋の発言を正しく理解するために、当時の状況を簡単におさらいしておきたいと思います。
1. 安倍政権は、「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、TPP交渉参加に反対する」ことを選挙公約に、2012年12月の衆院選に勝利し、政権交代を果たしました。
2. 2013年2月22日の日米首脳会談後の内外記者会見で、安倍晋三は次のように述べました。
3. この安倍晋三の発言を受けて、マスコミ各社は次のような見出しで報じました。
『東京新聞 TPP交渉参加表明へ 日本「成果」合作でシナリオ』
『毎日新聞 安倍首相:TPP交渉参加表明へ 全関税撤廃求めず確認 』
『朝日新聞 首相、TPP交渉参加表明へ 関税の聖域、日米確認』
『産経新聞 日米首脳会談、関税「例外」を容認 TPP交渉参加表明へ』
さて、上の事実をふまえた上で、もう一度、2013年3月1日の三橋貴明の発言に耳を傾けてみましょう。
三橋貴明は、ここで、ある明白な嘘を述べています。
それは、マスコミ各社は、あくまで「安倍首相は今後TPP交渉参加を表明するだろう」と未来の可能性に関して言及していたにすぎず、「安倍首相は既にTPP交渉参加を表明した」と完了形では報じていないのに、三橋貴明は、「マスコミが『交渉参加を既に表明した』と報じた」といって事実をねじまげた上で、マスコミに根拠の無い批判を向けていた点です。
つまり、三橋貴明は、
「安倍晋三が正式にTPP交渉参加表明をするまでは、安倍晋三は正式にTPP交渉参加表明していない。」
という、全く意味をなさないトートロジー(同語反復)の上に、
「マスコミ各社は『安倍首相は既にTPP交渉参加を表明した』と報じた。」
という虚偽を重ね合わせて、
「マスコミのTPPに関する報道は異常だ」
と、あらぬ批判をマスコミに向けながら、
「安倍晋三はまだTPP交渉参加を行っていない。ゆえに、安倍晋三はこれからもTPP交渉参加を行うことはないのだ。」
と、いわんばかりの詭弁を展開していたことになります。
いったい、「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、TPP交渉参加に反対する」ことを公約に掲げていた日本の総理大臣が、「日米首脳会談で『聖域なき関税撤廃』を前提にしないことが確認された」と発言し、「TPP交渉参加するかどうかについて早期に判断する」と述べたときに、この「判断」が、「TPP交渉に参加しない」ネガティブな判断にはなり得ないことは、政治家の用いる通常のレトリックを読み解く程度のリテラシーのある人間なら、誰でも簡単に予測できる事実です。
実際に、日本の総理大臣が「TPP交渉に参加しない判断」の可能性をみじんでも考慮にいれていたら、「早期に判断する」などという前のめりな言い方はわざわざせず、「時間をかけて慎重に検討したい」とかあいまいな言い方になっていたことでしょう。
マスコミが「安倍政権は近くTPP交渉参加を表明するだろう」と報じたことは、きわめて順当な推論であったわけであり、また、その報道には政府関係者から得た情報の裏付けもあったはずですが、三橋貴明は、そのような推論から目をそらしたばかりか、「マスコミは『安倍首相が既にTPP交渉参加を表明した』と報じた」という虚偽を公然と語り、マスコミ叩きに人々の批判の矛先を仕向けることによって、TPP交渉参加に踏み出そうとする安倍政権に対して人々の怒りが向かないように計らっていたわけです。
さて、これと全く同型の詭弁を弄していた人物がいます。
不思議なことに、三橋貴明と経済に関する立場と主張を異にし、三橋貴明と対立している「ハズ」の倉山満です。
倉山満の上のブログ記事は、安倍晋三によるTPP交渉参加表明二日前に書かれた三橋貴明の下のブログ記事と瓜二つです。
性格も、立場も、主張も異なる「ハズ」のこの二人が、まったく同一のやり方で、マスコミをスケープゴートとして利用し、TPP交渉参加や消費税増税に関する安倍晋三への人々の批判をそらそうと仕向けていたのは、一体どういう理由によるのでしょうか?
古谷経衡: 今、TPPという話が三橋さんからでたんですけれども、今、安倍内閣がですね、日米首脳会談が終わってTPP、まあ条件付きとかいろいろ報道がなされていますが、報道ではね、あ、これはもう入ることが決定で、交渉参加イコール入るみたいな感じで、もう秒読みだということが大手マスメディア全部そうなっていますけれど、これはどうなんですか、本当なんですか?
三橋貴明: 安倍さんは、参加以前に「交渉に参加」と表明したことはないんですよ。ないですよ。「交渉に参加する」と表明したことはない。「判断する」と言っているんですよ。「交渉に参加するかどうか判断する」と言っているにも関わらず、それがいつのまにか「交渉参加を表明した」に書き換えられちゃっているんですよね。もう異常。TPPに関する今の報道は。
(出典: チャンネル桜「さくらじ#75 三橋貴明・さかき漣が語る!『希臘から来たソフィア』」2013年3月1日収録)
上の三橋の発言を正しく理解するために、当時の状況を簡単におさらいしておきたいと思います。
1. 安倍政権は、「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、TPP交渉参加に反対する」ことを選挙公約に、2012年12月の衆院選に勝利し、政権交代を果たしました。
2. 2013年2月22日の日米首脳会談後の内外記者会見で、安倍晋三は次のように述べました。
私は選挙を通じて、聖域なき関税撤廃を前提とするTPPには参加しないと、国民の皆様にお約束をし、そして今回のオバマ大統領との会談により、TPPでは聖域なき関税撤廃が前提ではないことが明確になりました。私たちが示してきた5つの判断基準についても、言及をしました。
交渉参加するかどうかについて、これは政府全権事項として、政府に対し一任をして頂く、そういうことをお願いしていきたいと思っております。その上において判断する考えであります。時期についてはですね、なるべく早い段階で、決断したいと思っています。
(出典: 首相官邸ホームページ 「平成25年2月23日内外記者会見」)
3. この安倍晋三の発言を受けて、マスコミ各社は次のような見出しで報じました。
『東京新聞 TPP交渉参加表明へ 日本「成果」合作でシナリオ』
『毎日新聞 安倍首相:TPP交渉参加表明へ 全関税撤廃求めず確認 』
『朝日新聞 首相、TPP交渉参加表明へ 関税の聖域、日米確認』
『産経新聞 日米首脳会談、関税「例外」を容認 TPP交渉参加表明へ』
さて、上の事実をふまえた上で、もう一度、2013年3月1日の三橋貴明の発言に耳を傾けてみましょう。
三橋貴明: 安倍さんは、参加以前に「交渉に参加」と表明したことはないんですよ。ないですよ。「交渉に参加する」と表明したことはない。「判断する」と言っているんですよ。「交渉に参加するかどうか判断する」と言っているにも関わらず、それがいつのまにか「交渉参加を表明した」に書き換えられちゃっているんですよね。もう異常。TPPに関する今の報道は。
三橋貴明は、ここで、ある明白な嘘を述べています。
それは、マスコミ各社は、あくまで「安倍首相は今後TPP交渉参加を表明するだろう」と未来の可能性に関して言及していたにすぎず、「安倍首相は既にTPP交渉参加を表明した」と完了形では報じていないのに、三橋貴明は、「マスコミが『交渉参加を既に表明した』と報じた」といって事実をねじまげた上で、マスコミに根拠の無い批判を向けていた点です。
つまり、三橋貴明は、
「安倍晋三が正式にTPP交渉参加表明をするまでは、安倍晋三は正式にTPP交渉参加表明していない。」
という、全く意味をなさないトートロジー(同語反復)の上に、
「マスコミ各社は『安倍首相は既にTPP交渉参加を表明した』と報じた。」
という虚偽を重ね合わせて、
「マスコミのTPPに関する報道は異常だ」
と、あらぬ批判をマスコミに向けながら、
「安倍晋三はまだTPP交渉参加を行っていない。ゆえに、安倍晋三はこれからもTPP交渉参加を行うことはないのだ。」
と、いわんばかりの詭弁を展開していたことになります。
いったい、「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、TPP交渉参加に反対する」ことを公約に掲げていた日本の総理大臣が、「日米首脳会談で『聖域なき関税撤廃』を前提にしないことが確認された」と発言し、「TPP交渉参加するかどうかについて早期に判断する」と述べたときに、この「判断」が、「TPP交渉に参加しない」ネガティブな判断にはなり得ないことは、政治家の用いる通常のレトリックを読み解く程度のリテラシーのある人間なら、誰でも簡単に予測できる事実です。
実際に、日本の総理大臣が「TPP交渉に参加しない判断」の可能性をみじんでも考慮にいれていたら、「早期に判断する」などという前のめりな言い方はわざわざせず、「時間をかけて慎重に検討したい」とかあいまいな言い方になっていたことでしょう。
マスコミが「安倍政権は近くTPP交渉参加を表明するだろう」と報じたことは、きわめて順当な推論であったわけであり、また、その報道には政府関係者から得た情報の裏付けもあったはずですが、三橋貴明は、そのような推論から目をそらしたばかりか、「マスコミは『安倍首相が既にTPP交渉参加を表明した』と報じた」という虚偽を公然と語り、マスコミ叩きに人々の批判の矛先を仕向けることによって、TPP交渉参加に踏み出そうとする安倍政権に対して人々の怒りが向かないように計らっていたわけです。
さて、これと全く同型の詭弁を弄していた人物がいます。
不思議なことに、三橋貴明と経済に関する立場と主張を異にし、三橋貴明と対立している「ハズ」の倉山満です。
安倍総理の肉声。
テレ朝でのインタビュー
https://www.youtube.com/watch?v=ShukRGgA-Uw
増税するなんて、一言も言っていない。
・経済成長でデフレ脱却!このチャンスを逃すな。
・増税した場合でも腰折れしない対策を指示はした。
むしろ、挑発的な質問には「フッ」とか笑ってる。
産経やロイターが報じている「増税を前提にした議論」は、質問者の前提に載っただけ。安倍さんはしっかり「経済成長が重要」と明言しているが、そこを飛ばして、かつ仮定の質問だということも飛ばしている。報道としてどうよ?
しかし、
「本日安倍総理、3時間ぶり7度め、通算11回目の増税決断」
みたいなの多すぎないか?
テレビと新聞だと、総理は何回、増税を決断したんだ?
誰か数えて。
(出典: 倉山満の砦「安倍首相、増税を明言せず」2013年9月22日)
倉山満の上のブログ記事は、安倍晋三によるTPP交渉参加表明二日前に書かれた三橋貴明の下のブログ記事と瓜二つです。
3月15日に、新聞報道によると何度目になるか分からない「安倍首相、TPP交渉参加表明」があるとのことですが、一体、安倍総理は何回「交渉参加表明」とやらをやればいいんでしょうか。
散々に「交渉参加表明!」の見出しの記事を書いて、実は「政府関係者」と称する自民党推進派のミスリードだったり、経済産業省の飛ばしだったりを繰り返してきたわけですが、いい加減に日本の新聞やテレビも「学習」した方が良いのでは。
(出典: 三橋貴明ブログ「TPP交渉参加『表明』問題」2013年3月13日)
性格も、立場も、主張も異なる「ハズ」のこの二人が、まったく同一のやり方で、マスコミをスケープゴートとして利用し、TPP交渉参加や消費税増税に関する安倍晋三への人々の批判をそらそうと仕向けていたのは、一体どういう理由によるのでしょうか?
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