「多元的保守」とは何か(6)

特定の時代を、否定もせず、肯定もせず、より深い根底に根ざす。
戦後の日本に現れ、今も多くの日本人の意識を支配している、「右翼VS左翼」の二項対立は、明治維新から戦前・戦中にかけての、大日本帝国憲法下の旧体制(「明治体制」とここでは呼ばせていただきます)をどう評価するのかという問いにおいて、最も明瞭な形で顕在化します。

言うまでもなく、安倍、田母神、チャンネル桜等の「右翼」は、「明治体制」を賛美し、理想化します。「右翼」は、「明治体制」に日本の本来あるべき理想像を求め、日本国憲法によって日本の姿がゆがめられた「戦後体制」から脱却し、「明治体制」に回帰しようとします。

一方、「左翼」は、「明治体制」を嫌悪し、否定します。「左翼」は、「明治体制」を、国民に十全な基本的人権が認められなかった暗黒時代、前近代的なファシズムや軍国主義の時代として唾棄します。

では、「多元的保守」は、「明治体制」をどう評価するか。

「右翼」による賛美や、「左翼」による嫌悪という、典型的な姿勢とは異なり、「多元的保守」は「明治体制」を肯定も否定もしません。「明治体制」を理想化もせず、同時に、日本の歴史から排除も切断もしません。縄文時代から現代に至る、日本人の歴史的歩みの総体の中に、「明治体制」を相対化すると同時に、包摂しようとします。

このことが可能になるのは、日本人の歴史的歩みの総体の中に、私たちが、「根底と地盤」とを見いだす時です。

"Darum fragen wir jetzt: Könnte nicht, wenn schon die alte Bodenständigkeit verloren geht, ein neuer Grund und Boden dem Menschen zurückgeschenkt werden, ein Boden und Grund, aus dem das Menschenwesen und all sein Werk auf eine neue Weise und sogar innerhalb des Atomzeitalters zu gedeihen vermag?"

「それ故、今や私どもは問うのであります、すなわち、たとえ古い土着性が失われていくとしましても、人間にある新しい根底と地盤とが、すなわち、そこから人間の本質と彼のすべての仕事と作品とが、ある新しい仕方で、しかも原子時代の内においてさえも生い立つことのできるところの根底と地盤とが、くりかえし贈られてくることは、不可能であろうかと。」

(出典: Martin Heidegger, Gelassenheit (1959), マルチン・ハイデッガー『放下』辻村訳 )

ハイデッガーによる上記の質問の答えは、「可能である」です。

日本人は、その上に積み重なった地層を浸透してやがて噴出する地下水脈を、歴史の根底に抱えているからです。
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