中野剛志の奇妙な言説
「国境にこだわる時代」と「国境にこだわらない時代」のはざまで。
中野剛志氏が、彼にしてはかなり的外れな、というより意図的に的をはずしたかにも思える、次のような奇妙な言説を掲げています。
【東田剛】絶滅への道
テレビで、特定秘密保護法に反対するデモ行進を見ましたが、冷戦時代の左翼が復活したみたいで、まるで『ウォーキング with ダイナソー』(http://www.foxmovies.jp/wwd/)でした。
<本件については、小浜逸郎先生のblogが参考になります>
http://kohamaitsuo.iza.ne.jp/blog/
サヨクザウルスは「特定秘密保護法は、戦争への道だ。ガオ~!」と吼えていますが、何を寝ぼけているのでしょうか。
はっきり言いましょう。
特定秘密保護法の成立よりも、戦争への道の方が先に始まっているのです。
それは、中国の最近の不穏な動きを見れば明らかでしょう。中国は、我が国の領土をあからさまに獲りに来ているのですよ。
しかも、これはアメリカ覇権の終わりという、歴史的に大きな情勢変化と連動しているのです。
もっとも、ダイナソーは左翼に限りません。
日本全体がジュラシック・パークでした。
例えば、平成14年度比で、中国は軍事費を約3.5倍に増やしているのに、日本は、なんと減らし気味です。
http://www.mod.go.jp/j/approach/others/shiritai/budget/img/budget_02_a.jpg
現実の国際政治においては、領土というものは軍事力で守り、奪われたら軍事力で奪い返すのが、国家の基本です。
しかし、日本は、北方領土や竹島は獲られっぱなしで、尖閣は狙われているのに、いっこうに、軍事力を強化しようとはしませんでした。
もちろん、領土を取り戻すために、むやみに戦争に訴えればいいというものではありません。
ですが、本気で取り返すつもりならば、少なくとも臥薪嘗胆で準備し、チャンスを待つ必要があります。それが国家というものです。
その意味で、中国は、着々と軍事力を強化し、チャンスを待っていたわけです。そして、アメリカの弱体化を見るや、いよいよ、尖閣を獲るべく、攻勢を強めた。
その間、日本は、アメリカの軍事力に寄っかかったまま、財政健全化にいそしみ、国防費はむしろ減らしてきた。
これは、どう考えても、日本の戦略的な敗北でしょう。
ていうか、戦略自体がなかった。
もちろん、中国の主張は理不尽だし、そもそも、あの国はとんでもない国です。
しかし、いくら中国の言い分を非難したり、あざ笑ったりしたところで、溜飲は下がるかもしれませんが、軍事的な現実からは逃れられません。
遅きに失したとは言え、安倍政権は、巻き返しに頑張っています。特定秘密保護法も日本版NSCも、その一環でしょう。
(後略)
テレビで、特定秘密保護法に反対するデモ行進を見ましたが、冷戦時代の左翼が復活したみたいで、まるで『ウォーキング with ダイナソー』(http://www.foxmovies.jp/wwd/)でした。
<本件については、小浜逸郎先生のblogが参考になります>
http://kohamaitsuo.iza.ne.jp/blog/
サヨクザウルスは「特定秘密保護法は、戦争への道だ。ガオ~!」と吼えていますが、何を寝ぼけているのでしょうか。
はっきり言いましょう。
特定秘密保護法の成立よりも、戦争への道の方が先に始まっているのです。
それは、中国の最近の不穏な動きを見れば明らかでしょう。中国は、我が国の領土をあからさまに獲りに来ているのですよ。
しかも、これはアメリカ覇権の終わりという、歴史的に大きな情勢変化と連動しているのです。
もっとも、ダイナソーは左翼に限りません。
日本全体がジュラシック・パークでした。
例えば、平成14年度比で、中国は軍事費を約3.5倍に増やしているのに、日本は、なんと減らし気味です。
http://www.mod.go.jp/j/approach/others/shiritai/budget/img/budget_02_a.jpg
現実の国際政治においては、領土というものは軍事力で守り、奪われたら軍事力で奪い返すのが、国家の基本です。
しかし、日本は、北方領土や竹島は獲られっぱなしで、尖閣は狙われているのに、いっこうに、軍事力を強化しようとはしませんでした。
もちろん、領土を取り戻すために、むやみに戦争に訴えればいいというものではありません。
ですが、本気で取り返すつもりならば、少なくとも臥薪嘗胆で準備し、チャンスを待つ必要があります。それが国家というものです。
その意味で、中国は、着々と軍事力を強化し、チャンスを待っていたわけです。そして、アメリカの弱体化を見るや、いよいよ、尖閣を獲るべく、攻勢を強めた。
その間、日本は、アメリカの軍事力に寄っかかったまま、財政健全化にいそしみ、国防費はむしろ減らしてきた。
これは、どう考えても、日本の戦略的な敗北でしょう。
ていうか、戦略自体がなかった。
もちろん、中国の主張は理不尽だし、そもそも、あの国はとんでもない国です。
しかし、いくら中国の言い分を非難したり、あざ笑ったりしたところで、溜飲は下がるかもしれませんが、軍事的な現実からは逃れられません。
遅きに失したとは言え、安倍政権は、巻き返しに頑張っています。特定秘密保護法も日本版NSCも、その一環でしょう。
(後略)
(出典: 三橋貴明の「新」日本経済新聞)
中野剛志氏は、尖閣諸島をめぐって日中間の緊張が高まる中、日本が中国に対峙しうる自立した軍事力を整備する上で特定秘密保護法は要請されているのであり、この法律に反対する人々は国家戦略を考慮しない「サヨク」だと批判するのですが、彼は、特定秘密保護法の意味と、私たちがおかれている歴史的文脈を完全に読み違えています。
現在、私たちがおかれている歴史的文脈を正しくとらえ直すために、安倍晋三の言葉にもう一度耳を傾けてみましょう。
9月25日、ニューヨークのウォール街で行った演説の中で安倍晋三は次のように述べました。
現在、私たちがおかれている歴史的文脈を正しくとらえ直すために、安倍晋三の言葉にもう一度耳を傾けてみましょう。
9月25日、ニューヨークのウォール街で行った演説の中で安倍晋三は次のように述べました。
また、10月7日にはAPECで、FTAAP「アジア太平洋自由貿易圏」について次のように言及しました。
「共に進歩し、繁栄する。そのための土俵づくりこそが、TPPであり、RCEPであると考えます。その先にあるFTAAPは、もはや絵物語ではありません。」
アメリカが主導する経済統合の枠組みであるTPPと、中国が主導する経済統合の枠組みであるRCEP、この二つをさらに統合したものがFTAAPなわけですが、従来の国家の枠組みが希薄化され「国境や国籍にこだわらない時代」へと突き進むグローバル化の進展のただ中で起きているのが、尖閣諸島をめぐる「国境や国籍にこだわる時代」に由来する領土紛争の問題です。
参照記事:
恐ろしい二つの地図
FTAAPに言及しはじめた安倍晋三
日本にグローバル化政策の推進を求めるアメリカと、領土問題に関して日本を煽り立てる中国との間に立たされてい私たちは、現在、国家を単位とした「国境や国籍にこだわる時代」と、国家が解消されていく「国境や国籍にこだわらない時代」のはざま、あるいはその二重性の中に置かれているわけですが、特定秘密保護法という法律も、この時代の二重性の中で理解されなくてはならないものです。
つまり、この法律は一面においては、尖閣諸島問題のような、「国境や国籍にこだわる時代」に由来する問題に対処するために、安全保障上要請されるという見かけ上の体裁を持っています。
しかし、同時に、この法律は、「国境や国籍にこだわらない時代」の実現、つまりは(特に先進国の)国民に痛みや貧困をもたらすようなグローバル化政策を粛々と効率的に推進するための情報隠蔽や言論統制のツールとして要請されるというもう一つの側面を持っています。
特定秘密保護法に反対する人々は、国境や国籍の重要性を否定して、前者の安全保障的な側面の故にこの法律に反対しているのでは必ずしもなく、グローバル化の推進、つまりは「国境や国籍にこだわらない時代」を招来するための情報遮断と言論統制という後者の側面の故にこそ、この法律に反対しているのですが、中野剛志氏は、他の自称「保守」の連中と同様に、特定秘密保護法の反対者を「サヨク」と断じることによって、意図的にか、この法律のもつ後者の側面を完全に無視してしまっています。
中野剛志氏は、TPP問題の急先鋒として、「国境や国籍にこだわらない時代」、すなわちグローバル化した世界の到来に警鐘を鳴らしてきた人物のはずですが、ここではなぜか「国境や国籍にこだわる時代」が永遠に続くことを信じるかのようにふるまいながら、特定秘密保護法のもつ安全保障的な側面だけを強調することにより、この法律とグローバリズムとのより密接で本質的な関連性から人々の目をそらし、「国境や国籍にこだわらない時代」の到来という歴史的文脈からは完全に切り離して特定秘密保護法の問題を論じています。
ナオミ・クラインの「ショック・ドクトリン」という概念を好んで引用してきた中野剛志氏は、領土問題のような「国境や国籍にこだわる時代」に由来する紛争問題が、「国境や国籍にこだわらない時代」に羊の群れを追いやり囲い込むために吠え立てる牧羊犬として機能するからくりについても、十分に知悉しておられるはずなのですが。
それにしても、「もはや、国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」と、はずかしげもなく宣言する首相が取り組む「国境問題(=領土問題)」とはいかなるものなのでしょうか。


参照記事:
恐ろしい二つの地図
FTAAPに言及しはじめた安倍晋三
日本にグローバル化政策の推進を求めるアメリカと、領土問題に関して日本を煽り立てる中国との間に立たされてい私たちは、現在、国家を単位とした「国境や国籍にこだわる時代」と、国家が解消されていく「国境や国籍にこだわらない時代」のはざま、あるいはその二重性の中に置かれているわけですが、特定秘密保護法という法律も、この時代の二重性の中で理解されなくてはならないものです。
つまり、この法律は一面においては、尖閣諸島問題のような、「国境や国籍にこだわる時代」に由来する問題に対処するために、安全保障上要請されるという見かけ上の体裁を持っています。
しかし、同時に、この法律は、「国境や国籍にこだわらない時代」の実現、つまりは(特に先進国の)国民に痛みや貧困をもたらすようなグローバル化政策を粛々と効率的に推進するための情報隠蔽や言論統制のツールとして要請されるというもう一つの側面を持っています。
特定秘密保護法に反対する人々は、国境や国籍の重要性を否定して、前者の安全保障的な側面の故にこの法律に反対しているのでは必ずしもなく、グローバル化の推進、つまりは「国境や国籍にこだわらない時代」を招来するための情報遮断と言論統制という後者の側面の故にこそ、この法律に反対しているのですが、中野剛志氏は、他の自称「保守」の連中と同様に、特定秘密保護法の反対者を「サヨク」と断じることによって、意図的にか、この法律のもつ後者の側面を完全に無視してしまっています。
中野剛志氏は、TPP問題の急先鋒として、「国境や国籍にこだわらない時代」、すなわちグローバル化した世界の到来に警鐘を鳴らしてきた人物のはずですが、ここではなぜか「国境や国籍にこだわる時代」が永遠に続くことを信じるかのようにふるまいながら、特定秘密保護法のもつ安全保障的な側面だけを強調することにより、この法律とグローバリズムとのより密接で本質的な関連性から人々の目をそらし、「国境や国籍にこだわらない時代」の到来という歴史的文脈からは完全に切り離して特定秘密保護法の問題を論じています。
ナオミ・クラインの「ショック・ドクトリン」という概念を好んで引用してきた中野剛志氏は、領土問題のような「国境や国籍にこだわる時代」に由来する紛争問題が、「国境や国籍にこだわらない時代」に羊の群れを追いやり囲い込むために吠え立てる牧羊犬として機能するからくりについても、十分に知悉しておられるはずなのですが。
それにしても、「もはや、国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました」と、はずかしげもなく宣言する首相が取り組む「国境問題(=領土問題)」とはいかなるものなのでしょうか。
「遅きに失したとは言え、安倍政権は、巻き返しに頑張っています。」
などという無邪気な信頼を、私たちは安倍政権に寄せることは可能でしょうか。
竹島問題の国際司法裁判所への提訴を取りやめたり、沖縄の人々を置き去りにした「主権回復の日」を強行したり、沖縄の分離独立すら促しかねない道州制を推進しようとする安倍政権の姿勢から伝わってくるのは、まさに「国境にこだわる時代は過ぎさった」という安倍晋三の言葉の通り、領土問題に消極的な姿勢だけなのですが。
舌鋒鋭い安倍政権への批判によって、「保守」勢力の最後のよりどころとして、私たちが信頼を寄せてきた中野剛志氏までもこの調子では、
「そして誰もいなくなった」
とつぶやかずにはおれません。
竹島問題の国際司法裁判所への提訴を取りやめたり、沖縄の人々を置き去りにした「主権回復の日」を強行したり、沖縄の分離独立すら促しかねない道州制を推進しようとする安倍政権の姿勢から伝わってくるのは、まさに「国境にこだわる時代は過ぎさった」という安倍晋三の言葉の通り、領土問題に消極的な姿勢だけなのですが。
舌鋒鋭い安倍政権への批判によって、「保守」勢力の最後のよりどころとして、私たちが信頼を寄せてきた中野剛志氏までもこの調子では、
「そして誰もいなくなった」
とつぶやかずにはおれません。
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