野生と文明の相克の物語(1)

南京虐殺動画シナリオ原案(1)
フランスの人類学者レヴィ=ストロースが、1962年に『野生の思考』(原題 La Pensée sauvage, 英訳 The Savage Mind)を著し、文明の埒外に生きる人々が発展させてきた比喩に基づく神話的思考と、近代文明を生み出した科学的思考との相似性と対等性を明らかにするまでは、「野生」(The savage)は、「文明」によって制圧され、征服されるべき対象と見なされていた。

西洋の人々が抱くこの信念に基づいて、アフリカの黒人たちは奴隷として売買され、中南米のインディオたちはキリスト教に改宗させられ、オーストラリアのアボリジニたちは動物のように狩られ、アジアの諸国は植民地として支配されてきたのである。

1945年9月1日、トルーマン大統領が、対日戦勝を記念して行ったラジオ演説で、次のように述べた際にも、日本とアメリカの戦争は、単なる二国間の紛争であるに留まらず、「文明」と「野蛮」(The Savage)との間の、人類史的な相克の一つのエピソードとして捉えられていた。

アメリカ国民の皆さん、そして東京湾におられる連合軍最高司令官マッカーサー大将、

全アメリカの、そして全世界の文明国の思いと希望が、今夜戦艦ミズーリ号の上に集まっています。この艦、アメリカの大地を代表する戦艦は東京湾の中にあり、その上で日本は公式に武器を置くことを誓ったばかりです。彼らは無条件降伏文書に署名したのです。

4年前、全世界の文明国の思いと恐怖は、アメリカの大地を代表する別の部分に集まっていました。そう、真珠湾にです。そこから始まった、文明世界に対する強大な脅威は、いまや終わりを告げました。東京までの道ははるかな、そして血にまみれた道でありました。

我々は真珠湾を忘れません。日本の軍国主義者たちは軍艦ミズーリ号を忘れないでしょう。

日本の戦争指導者たちが行った邪悪な行為の結果は、決していやされることも忘れ去られることもありません。しかし、彼らの破壊と殺戮のための力は除き去られました。彼らの陸軍と海軍に残されたものには、もはや何の力もありません。

ここに至って我々すべてがまず感じるのは、全能の神への感謝の念であります。神は我々と連合国を死の危険のふちにあった暗黒の日々の中でも支え給い、弱々しかった我々を史上最強の戦う力にまで育て給い、そしていま、神のつくり給うた文明世界を破壊しようとたくらんだ暴君たちの力に我々が打ち勝ったのをご覧になっているのです。

(出典: ハリー・S・トルーマン「対日戦勝記念演説」)

さらに、トルーマンは、原子爆弾を「文明」が生み出した最強の兵器として誇りながら、地球のすみずみを「文明」が覆い尽くす、戦後世界の新しい秩序の構築を宣言していた。

自由な国民と自由な同盟国、原子爆弾を開発しえた同じ国民は、同じ技と熱意と決断力を、我々の前途に横たわる難問に打ち勝つために使うことができるでしょう。

勝利は常に、喜びと同時に重い責任をももたらすのです。

しかし我々は、未来とそれに伴う危険から目を背けることなく、偉大な確信と希望をもってこれに立ち向かいます。アメリカは自身のために、雇用と安全が保障された未来を実現することができます。そしてそれは連合国諸国とともに、正義と公正な取引と寛容にあふれた平和な世界を打ち建てることにつながるのです。

私は、合衆国大統領として、1945年9月2日日曜日を対日戦勝記念日、すなわち日本の公式な降伏記念日として宣言します。これはまだ公式な戦争の終わりではありませんし、敵対関係の終結でもありません。しかしこの日は、我らアメリカ人にとって、永遠に「報いの日」として記憶されることでしょう。そう、我々がもうひとつの日、「恥辱の日」を記憶し続けるように。

今日から我々は前進を始めます。安心して暮らせる新時代に向かって。他の連合国諸国とともに、我々はより新しくよりよき世界に向かって歩き始めます。協調の世界、平和の世界、国際的な善意と協働の世界に向かって。

(出典: ハリー・S・トルーマン「対日戦勝記念演説」)

「文明」こそが正義であり、「野生」はひたすら克服され、除去されるべき「悪」であると見なす、単純で二元的な価値観によって戦後の世界は構築され、今の私たちもその中に置かれている。

アメリカが主導する、「文明」に基づく戦後の世界秩序の正当性(legitimacy)の根拠として、「文明」に刃向かう「野生」(Savage)の国家日本の異常性と「残虐性」(Savegeness)を示す物語が、現在に至るまで繰り返し流布されてきた。

「南京虐殺」は、そのようなエピソードの一つである。

「文明」が常に正義であり、「野生」が除去されるべき悪であるとする、戦後世界の生きる私たちが繰り返し刷り込まれてきたこの信念が正しいものならば、私たちはこの物語に疑いを差し挟むべきではない。

日本の20万人の市民の上に原子爆弾が投下されたことの「正当性」にも、一切疑いを抱くべきではない。

しかし、「文明」が、常に正しいものとは限らず、「文明」も「野生」も、人類が抱える資質の十全な発露のために、互いの欠落を満たすべき対等な関係に置かれているならば、私たちはもう一度、広島や長崎への原爆投下の正当性や、南京虐殺のような歴史問題に懐疑の目を向けるべきであろう。
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南京虐殺問題を語るにあたり、現地に取材にはいかれましたか?
または、行かれる予定はありますか?

それとも、現地に行く必要などないとお考えですか?

自分たちの意識を改善するために

WJF様 >久しぶりの執筆を大変喜ばしく思います。「非政治」について語られる方が非常に少ない中,世の中全体のあり方を広い視点で論じられるWJF様には,是非警鐘を鳴らしていただきたくコメントを書かせていただきました。
政治という枠組みに限定すれば,愚民ともいえる国民が自民を選んだという現実に目をそらすことはできません。しかし,目に見えない「非政治」の領域が必ず今の危険な日本の状態を救済することができると信じています。それは,私たち一人ひとりの意識にかかっているのだと思います。

No title

今回の選挙でもまた自民党が圧勝するみたいですね
本当に日本人は学習能力のない馬鹿ばかりですね

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南京大虐殺は戦勝国によって作られた偽りのお話で、日本軍による虐殺に関するあらゆる証拠はまったくの虚偽である可能性が高い。そう主張したいの?

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再開ありがとうございます。
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