日本語と日本社会(40)

「政治」と「非政治」(14)
日本国憲法第一条: 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。


日本国憲法第一条は、右翼によっても、左翼によっても、しばしば次の様に解釈されている。

日本国憲法によって政治権力を剥奪され『象徴』とされた天皇の地位は、今後、主権をもつ国民の意志によって自由に改廃することができる。


日本国憲法第一条をこのように誤読した上で、「右翼」勢力は「天皇の地位が国民の意思に基づくと定めた日本国憲法はとんでもない、改正するか無効にすべきだ」と憤り、「左翼」勢力は、「日本国憲法が定めているのだから、天皇制を国民は自由に廃止する権利がある」と主張してはばからない。

右翼も、左翼も、等しく陥っている上の解釈が、日本国憲法第一条の完全な誤読であることを、様々な角度から論証していこう。

今回は、天皇に関する歴史的事実から判断して、上の解釈が誤りであることを端的に示したい。

さて、日本国憲法第一条は、天皇は日本国の象徴であるとした前半部分と、象徴としての天皇の地位が国民の総意に基づくと述べた後半の二つの部分に分けることができる。

まず、前半部分に注目していただきたい。

日本国憲法第一条前半: 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、


日本国憲法第一条は、天皇は日本国の「象徴」であり、日本国民統合の「象徴」であると述べているが、一体、天皇が日本国の「象徴」であるのはいつからなのか。

日本国憲法が制定・施行された時点か、それとも日本国憲法が制定・施行されるよりはるか以前の時代からなのか。

この「象徴」という概念が、

日本国憲法第四条: 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。


が定める天皇の「非政治」性と密接な関係をもつとするならば、天皇が「非政治」的な存在であったのは、日本国憲法によって規定されるはるか以前のことからである。

天皇親政が行われたのは、日本史においてごくわずかな例外的な時期であり、日本史の大半の時代において、天皇は「非政治」的な存在なのであるから、天皇が「象徴」であったのも同様に、日本の歴史の大半の時代においてそうだったということになる。

つまり、

日本国憲法第一条前半: 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、


とした日本国憲法第一条前半は、あくまで、過去の日本の歴史を通して一貫して「象徴」でありつづけてきた天皇の地位を追認しただけということになる。

すると、

日本国憲法第一条後半: この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。


とした日本国憲法第一条後半も、当然のことながら、日本国憲法の制定と施行によって、国民が天皇の「象徴」としての地位を承認したいう意味ではなく、過去の日本の歴史を通して一貫する事実として、日本人が天皇の地位を認めてきたという歴史の既成事実を語ったものということになる。

しかし、反対者は次の様に言うだろう。

「『この地位は主権の存する日本国民の総意に基づく』と書かれているではないか。『国民主権』が定められたのは、日本国憲法によってなのだから、『この地位は主権の存する日本国民の総意に基づく』と述べたこの条文は、日本国憲法の制定と施行を通して、国民が『象徴』としての天皇の地位を承認したいう意味なのではないか。日本国憲法の制定と施行を通して、国民が「象徴」としての天皇の地位を承認しうるのであれば、新しい憲法を制定・施行することによって、現行の天皇の地位を、将来、国民は自由に改廃することができるのではないか」と。

国民が、「象徴」としての、つまり「非政治」的な存在としての天皇の地位を認めたのはいつなのかという問題に、 国民が主権を保持するようになったのはいつからなのかという問題が必然的に付随するわけだが、私たちはこの問題をどのように考えるべきだろうか。

(つづく)
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