日本語と日本社会(25)

「言霊」と「言挙げ」(14)
柿本人麿は、

日本はコトアゲしない国。「然れども」、私はコトアゲをするのだ。


といって、伝統への反逆を宣言した長歌を、次の反歌によってしめくくっている。

磯城島の 大和の国は 言霊の 助くる国ぞ ま幸くありこそ


反歌とは、長歌を要約した短歌である。

「日本はコトアゲしない国」(=日本はコトダマが幸う国)という日本の伝統に逆らって、コトアゲをした歌の要約が、「日本はコトダマが助ける国だ」というのである。

葦原の 瑞穂の国は 神ながら 事挙(ことあげ)せぬ国


と歌い始めたときには、コトダマとコトアゲは対立するものと捉えられているが、歌の締めくくりにおいては、「コトダマ」と「コトアゲ」は、もはや対立概念としては捉えられていない。

コトアゲはコトダマの働きの一部として捉えられている。

コトアゲとコトダマは、これまで考察してきたように、真逆の志向性を抱えるものでありながら、この二つは対立していない。

それは、自分と対立するものでさえも、大らかに、そして否応なく、包み込んでしまうコトダマ(あるいは述語)の働きによる。

主語と述語が、まったく異なる働きをもちながら、片方が他方に包摂される関係にあるように、コトアゲとコトダマもまた、まったく異なる互いに相容れないものでありながら、同時に、包摂し包摂される関係の中におかれている。

柿本人麿の和歌は、コトアゲとコトダマの、このような少しいりくんだ関係を、わかりやすく私たちに示している。

(つづく)
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