なぜ、「○○よ」と呼びかけるのか(20)

「言霊」と「言挙げ」(9)
本論からそれますが、含蓄のあるテキストですので、さらに少し詳しく「大祓詞」を分析してみましょう。

高皇産靈尊(タカミムスビ)と神皇産霊尊(カミムスビ)が主催した高天原での神々の会議
高天原に神留まり坐す 皇親神漏岐神漏美の命以て 八百万神等を神集へに集へ給ひ 神議りに議り給ひて 「我皇御孫命は 豊葦原瑞穂国を 安国と平けく知食せ」と 事依さし奉りき 

經津主神(フツヌシ)と武甕槌神(タケミカヅチ)による露払いと瓊瓊杵尊(ニニギ)の派遣
此く依さし奉りし国内に 荒振神等をば 神問はしに問はし給ひ 神掃へに掃へ給ひて 言問ひし磐根木根 立草の片葉をも事止めて 天の磐座放ち 天の八重雲を 伊頭の千別に千別て 天降し依さし奉りき 

豊葦原瑞穂国の統治
此く依さし奉りし四方の国中と 大倭日高見の国を安国と定め奉りて 下津磐根に宮柱太敷き立て 高天原に千木高知りて 皇御孫命の瑞の御殿仕へ奉りて 天の御蔭日の御蔭と隠り坐して 安国と平けく知食さむ

国民の増加と罪の発生
国内に成り出む天の益人等が 過ち犯しけむ種種の罪事は 天津罪 国津罪 許許太久の罪出む 

罪の解除の方法
此く出ば天津宮事以ちて 天津金木を本打ち切り末打ち断ちて 千座の置座に置足はして 天津菅麻を本刈り断ち末刈り切りて 八針に取裂きて 天津祝詞の太祝詞事を宣れ

此く宣らば 天津神は天の磐戸を押披きて 天の八重雲を伊頭の千別に千別て聞食さむ 国津神は高山の末低山の末に登り坐て 高山の伊褒理低山の伊褒理を掻き別けて聞食さむ 此く聞食してば罪と言ふ罪は有らじと 

天津神が祝詞をお聞き下さることによって罪が消滅することの比喩
科戸の風の天の八重雲を吹き放つ事の如く 朝の御霧夕の御霧を朝風夕風の吹き掃ふ事の如く 大津辺に居る大船を舳解き放ち艪解き放ちて大海原に押し放つ事の如く 彼方の繁木が本を焼鎌の利鎌以て打ち掃ふ事の如く 遺る罪は在らじと祓へ給ひ清め給ふ事を 

国津神が祝詞をお聞き下さることによって罪が消滅することの比喩
高山の末低山の末より佐久那太理に落ち多岐つ 早川の瀬に坐す瀬織津比売と言ふ神 大海原に持出でなむ 此く持ち出で往なば 荒潮の潮の八百道の八潮道の潮の八百曾に坐す速開都比売と言ふ神 持ち加加呑みてむ 此く加加呑みてば 息吹戸に坐す息吹戸主と言ふ神 根国底国に息吹放ちてむ 此く息吹放ちてば 根国底国に坐す速佐須良比売と言ふ神 持ち佐須良比失ひてむ 此く佐須良比失ひてば 罪と言ふ罪は在らじと祓へ給ひ清め給ふ事を 

結語
天津神国津神八百万の神等共に聞食せと白す


後段の自然の連係作用によって罪が運び去られる描写は比喩であり、罪は、天津神と国津神が、祝詞を聞いてくださることによって解除される。

この比喩部分は、「天津神が祝詞を聞き遂げてくださる部分」と「国津神が祝詞を聞き遂げてくださる部分」の二つに分かれている。



タカミムスビが、ニニギを地上に派遣する場面
「天の磐座放ち天の八重雲を伊頭の千別に千別て天降し依さし奉りき」

天津神が祝詞を聞いてくださる部分
「天の磐戸を押披きて天の八重雲を伊頭の千別に千別て聞食さむ」

上の二カ所で同じ表現が使われている。

タカミムスビがニニギに「事(コト)を依す」、上から下への運動と、人民が、神々に「言(コト)を宣る」、下から上への運動が対照的に置かれていることがわかる。
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