ユダヤ陰謀論はなぜ「悪」か(4)

イスラエルを特殊視してはならない。
「シオニストのユダヤ人は悪だ」
「シオニストのユダヤ人が世界を支配している」
「グローバリズムやNWOを推進しているのはシオニストのユダヤ人だ」

このような主張がユダヤ陰謀論者によってまことしやかに語られていますが、この話は本当でしょうか。今日以降、シオニズムの問題を考えていきます。

始めに結論を申し上げておきますと、シオニズムをめぐる問題は、シオニズムを支持する人々も、シオニズムに反対する人々も、イスラエルという国家の存在をあまりに特殊視してしまっている点にあります。

実際には、イスラエルの建国は、19世紀から20世紀にかけて世界各地の旧体制が崩壊した後に、ヨーロッパの国民国家をひな形とした、諸民族による様々な国民国家の建設が行われていった、その世界的な運動の中の一事例に過ぎないのであり、またそのようなものとして論じられなければならないものです。

19世紀から20世紀にかけての国民国家の建設の中には、日本の明治維新も含まれれば、中国の辛亥革命、中華人民共和国の建国、朝鮮半島の独立、インドの独立や、東南アジアやアフリカ各国の独立、そして何よりも、オスマントルコ崩壊後の中東諸国の建国が含まれます。

このように、国民国家建設という世界的なトレンドの中で生じたのがイスラエルの建国ですから、イスラエルという国民国家の存在の是非を論じるとき、私たちは同時に、19世紀から20世紀にかけて、世界各地でおきた国民国家の建設という出来事が是であったのか非であったのかを問うことになります。

イスラエルという国民国家を否定するのであれば、同時に、世界各地の国民国家の存在も否定されなければなりません。逆に、私たちが、世界各地の国民国家の存在をよきものとして認めるのであれば、同時に、イスラエルという国民国家の存在も認めなければなりません。

ユダヤ人の国民国家であるイスラエルのみを、それがユダヤ人の国家であるからという理由で特別扱いすることは許されません。それはイスラエルを擁護する論理の中でも、イスラエルを否定する論理の中でも同じです。

ユダヤ人の中にすら、シオニズムやイスラエルという国家の存在を否定する人々がいます。そしてそのようなユダヤ人は「よきユダヤ人」とみなされがちです。まるで、日本の戦争犯罪を積極的に認めて謝罪する日本人が「よき日本人」とみなされがちなように。

しかし、私たちが注意深くあらねばならない点は、イスラエルという国民国家の存在を否定するユダヤ人が是とするユダヤ人のあり方とは、オスマン帝国やアメリカのような巨大帝国のなかに寄留するユダヤ人のあり方です。

国家に帰属せず、外国に移民として留まる生き方を是とする。この価値観は、国家なき世界をよい世界と見なすグローバリストの価値観そのものです。

つまり、シオニズムを支持する人々がグローバリズムを推進しているのではなく、逆に、シオニズムを否定し、イスラエルという国民国家の存在を否定する人々こそが、グローバリズムに傾斜している事実を私たちは念頭にいれる必要があります。

グローバリズムを支持する有名な投資家として知られるジョージ・ソロスのようなユダヤ人はその一人であり、彼はイスラエルやシオニズムを支持せず、むしろ批判しています。国家は不要であり、邪悪で危険なものだとみなしているからです。

次回以降、

「イスラエル建国は、なぜ、世界各地で起きた国民国家建設の一事例に過ぎないと言えるのか。」

イスラエル建国の歴史的経緯を簡単におさらいします。

そしてさらに、

「イスラエルという国民国家の是非の問題と、世界各地の国民国家全般の是非の問題はどうつながっているのか。」

より詳しく論じていきます。
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