2017: バブル崩壊の一年
経済的な波乱の一年。
あけまして、おめでとうございます。
株価 年末の終値は5年連続で前年上回る(NHKニュース)
トランプ相場は新年も継続 “爆上げ”期待のお年玉21銘柄(日刊ゲンダイ)
2017年は1ドル130円まで円安が進む可能性、日経平均は2015年の高値2万0952円の突破も(東洋経済新聞)
アメリカ大統領選でのトランプの勝利から始まった「トランプ相場」(株価や為替の急上昇)に、金融業界や投資家たちが沸き立っているようですが、彼らの楽観的な予測とは裏腹に、2007年から2008年にかけての深刻なバブル崩壊(リーマンショック)以降、長く継続されてきた量的緩和・低金利政策によって日経平均20000円、ダウ20000ドルに届かんまでに大きく膨らんだバブル経済は、熟しきった柿の実が枝から離れ落ちるように、大統領選後に急上昇したアメリカ長期金利と、昨年末にアメリカが行った2014年10月の量的緩和終了後二回目の金利引き上げ、あるいはFED(アメリカ連邦準備制度)が2017年中に予定している数回の引き上げを契機に、2017年、大きな下落へと転じることでしょう。実際に、2015年の12月に行われたFEDによる9年ぶりの利上げは、中国の景気失速やBrexitと相まって、2016年の前半に、ドル安・株安を引き起こしました。

(アメリカの平均株価S&P 500のチャート)

(日経平均株価のチャート)

(ドル・円のチャート)
安倍支持を煽り立てた政治評論家もまったくいい加減ですが、昨年12月のFEDの金利引き上げ後も、株高・ドル高という景気の楽観論を煽り立てている経済評論家も相当いい加減であり、彼らは、拡大する日米の金利差がドル高をひきおこし、ドル高が株高を引き起こすと主張するのですが、リーマンショック後の景気回復と株価の上昇が、長期的なゼロ金利・金融緩和政策によってもたれされたものであるという単純な事実を無視しています。
FEDは、すでに遅きに失したと言われている金利引き上げを余儀なくされている一方、金利の上昇とドル高はアメリカの実体経済に強い引き締め効果を及ぼします。また、「トランプ相場」に付随して生じた長期金利の上昇は、株のような投機的な資産から、債券や金といった安全性の高い資産への資金の移動を引き起こす可能性があり、すでにそのような動きが一部で観測されています。
FEDは、長期金利の急速な上昇を抑えるために、日本やヨーロッパの金融緩和政策の継続に期待せねばならず、そのためにドル高容認のメッセージを出さざるをえない一方で、政策金利引き上げとドル高が、アメリカ経済にもたらす引き締め効果も当然理解していることでしょう。しかし、ドル高を招いてでも、今、金利を引き上げておかないと、FEDは将来のバブル崩壊の際に講ずる対策手段を失うというジレンマに立たされています。
(「アメリカが、国内の自動車業界などからあげられているドル高牽制の要求を無視してでも、ドル高・円安を容認しているのは安倍外交の成果だ」と述べる経済評論家もいますが、そうではなく、日本やヨーロッパが金融緩和をやめて利上げに転ずれば、アメリカの長期金利が上昇し、バブル崩壊の引き金を引いてしまうことをアメリカ政府が認識しているからだと考えるべきです。「親切にドル高を容認してくれている」のではなく、金利引き上げという逃げ道をアメリカが着々と準備する肩代わりに、アメリカの長期金利抑制のために、マイナス金利という、逃げ場のないどん詰まりの金融緩和政策を続ける損な役回りを日本が引き受けさせられているのです。)
また、大型減税と財政出動というトランプ政権の掲げる財政政策は、低金利での資金調達を前提とするため、FEDが今後も推し進めようとしている政策金利引き上げとは真っ向から対立します。
これらのジレンマが飽和に達するきざしは、1月20日のトランプ大統領就任前に、すでになんらかの形で表出するかもしれません。
バブル崩壊が時間の問題であるならば、トランプは、自分の大統領就任後にバブルが崩壊して支持率を下げるよりも、就任前にバブルが崩壊したところに、颯爽と経済の救世主として自分が登場する方が望ましいと考えているはずだからです。
株価は暴落し、アメリカは再び、金利引き下げどころか量的緩和をも復活させなくてはならなくなり、ドル・円相場が再び100円を割る、円高・ドル安の時代がやってきます。
リーマンショック後の世界的な金融緩和と景気回復の流れを前提とし、その中に組み込まれていたアベノミクスは、その前提を失って完全に崩壊し、安倍政権の支持率も大きく低下することでしょう。
リーマンショックの時と異なるのは、ヨーロッパはいまだ金融緩和政策を続けており、アメリカもまだ低金利の状態からしっかりと抜け出してはいないため、バブルが崩壊しても、リーマンショックの時には功を奏した量的緩和政策が、景気回復の特効薬としてはもはや役に立たないことです。中でも打つ手を完全に奪われているのは、マイナス金利という金融緩和政策の最先端をひた走っている日本です。
深刻な景気後退とナショナリズムが世界を覆う、不穏な時代がやってこようとしています。
大変な危機を迎える一年ですが、同時に、日本人が惰性としてひきずってきた従来のパラダイム(自民党の一党独裁)を一掃して、ゼロから新しい時代を組み上げるチャンスの年でもあります。
身を引き締めて、新しい一年を乗り切っていきましょう。
株価 年末の終値は5年連続で前年上回る(NHKニュース)
トランプ相場は新年も継続 “爆上げ”期待のお年玉21銘柄(日刊ゲンダイ)
2017年は1ドル130円まで円安が進む可能性、日経平均は2015年の高値2万0952円の突破も(東洋経済新聞)
アメリカ大統領選でのトランプの勝利から始まった「トランプ相場」(株価や為替の急上昇)に、金融業界や投資家たちが沸き立っているようですが、彼らの楽観的な予測とは裏腹に、2007年から2008年にかけての深刻なバブル崩壊(リーマンショック)以降、長く継続されてきた量的緩和・低金利政策によって日経平均20000円、ダウ20000ドルに届かんまでに大きく膨らんだバブル経済は、熟しきった柿の実が枝から離れ落ちるように、大統領選後に急上昇したアメリカ長期金利と、昨年末にアメリカが行った2014年10月の量的緩和終了後二回目の金利引き上げ、あるいはFED(アメリカ連邦準備制度)が2017年中に予定している数回の引き上げを契機に、2017年、大きな下落へと転じることでしょう。実際に、2015年の12月に行われたFEDによる9年ぶりの利上げは、中国の景気失速やBrexitと相まって、2016年の前半に、ドル安・株安を引き起こしました。

(アメリカの平均株価S&P 500のチャート)

(日経平均株価のチャート)

(ドル・円のチャート)
安倍支持を煽り立てた政治評論家もまったくいい加減ですが、昨年12月のFEDの金利引き上げ後も、株高・ドル高という景気の楽観論を煽り立てている経済評論家も相当いい加減であり、彼らは、拡大する日米の金利差がドル高をひきおこし、ドル高が株高を引き起こすと主張するのですが、リーマンショック後の景気回復と株価の上昇が、長期的なゼロ金利・金融緩和政策によってもたれされたものであるという単純な事実を無視しています。
FEDは、すでに遅きに失したと言われている金利引き上げを余儀なくされている一方、金利の上昇とドル高はアメリカの実体経済に強い引き締め効果を及ぼします。また、「トランプ相場」に付随して生じた長期金利の上昇は、株のような投機的な資産から、債券や金といった安全性の高い資産への資金の移動を引き起こす可能性があり、すでにそのような動きが一部で観測されています。
FEDは、長期金利の急速な上昇を抑えるために、日本やヨーロッパの金融緩和政策の継続に期待せねばならず、そのためにドル高容認のメッセージを出さざるをえない一方で、政策金利引き上げとドル高が、アメリカ経済にもたらす引き締め効果も当然理解していることでしょう。しかし、ドル高を招いてでも、今、金利を引き上げておかないと、FEDは将来のバブル崩壊の際に講ずる対策手段を失うというジレンマに立たされています。
(「アメリカが、国内の自動車業界などからあげられているドル高牽制の要求を無視してでも、ドル高・円安を容認しているのは安倍外交の成果だ」と述べる経済評論家もいますが、そうではなく、日本やヨーロッパが金融緩和をやめて利上げに転ずれば、アメリカの長期金利が上昇し、バブル崩壊の引き金を引いてしまうことをアメリカ政府が認識しているからだと考えるべきです。「親切にドル高を容認してくれている」のではなく、金利引き上げという逃げ道をアメリカが着々と準備する肩代わりに、アメリカの長期金利抑制のために、マイナス金利という、逃げ場のないどん詰まりの金融緩和政策を続ける損な役回りを日本が引き受けさせられているのです。)
また、大型減税と財政出動というトランプ政権の掲げる財政政策は、低金利での資金調達を前提とするため、FEDが今後も推し進めようとしている政策金利引き上げとは真っ向から対立します。
これらのジレンマが飽和に達するきざしは、1月20日のトランプ大統領就任前に、すでになんらかの形で表出するかもしれません。
バブル崩壊が時間の問題であるならば、トランプは、自分の大統領就任後にバブルが崩壊して支持率を下げるよりも、就任前にバブルが崩壊したところに、颯爽と経済の救世主として自分が登場する方が望ましいと考えているはずだからです。
株価は暴落し、アメリカは再び、金利引き下げどころか量的緩和をも復活させなくてはならなくなり、ドル・円相場が再び100円を割る、円高・ドル安の時代がやってきます。
リーマンショック後の世界的な金融緩和と景気回復の流れを前提とし、その中に組み込まれていたアベノミクスは、その前提を失って完全に崩壊し、安倍政権の支持率も大きく低下することでしょう。
リーマンショックの時と異なるのは、ヨーロッパはいまだ金融緩和政策を続けており、アメリカもまだ低金利の状態からしっかりと抜け出してはいないため、バブルが崩壊しても、リーマンショックの時には功を奏した量的緩和政策が、景気回復の特効薬としてはもはや役に立たないことです。中でも打つ手を完全に奪われているのは、マイナス金利という金融緩和政策の最先端をひた走っている日本です。
深刻な景気後退とナショナリズムが世界を覆う、不穏な時代がやってこようとしています。
大変な危機を迎える一年ですが、同時に、日本人が惰性としてひきずってきた従来のパラダイム(自民党の一党独裁)を一掃して、ゼロから新しい時代を組み上げるチャンスの年でもあります。
身を引き締めて、新しい一年を乗り切っていきましょう。
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