郵政民営化がもたらしたもの(2)

日本は「資本主義国家」ではなかった。
2000年当時には380兆円にも達した郵便貯金と簡保保険の資産は、私たちの父母、祖父母、曾祖父母たちが、こつこつと働いて蓄えた血と汗と涙の結晶であり、まさに日本国民にとっての財産だった。

郵政民営化以前には、日本政府は、増税をしたり、国債を発行して借金を増やしたりすることなく、国民の財産を「第二の予算」として国作りのために活用することが許されていた。

郵政民営化以前の日本では、国民が郵便局にお金を預けるということは、国に財産を預けることを意味していた。

国は、国民からゆだねられた財産を、海外にばらまいたり、株価をつり上げるために株式市場に投資したりはせず、国土の保全のため、社会資本形成のため、産業の育成のため、国民の福祉の増進のため、国内の実体経済を活性化するために用いた。

そのことによって、国民の血と汗と涙の結晶である貴重な財産は、血液のように国内のすみずみにゆきわたり、景気を刺激し、国民がますます仕事に励んで、お金を蓄えることを可能にするという好循環を生み出していた。

これほど、正しい国民の財産の使い方があっただろうか。

明治維新以降、日本が敗戦という国家的危機を経たにも関わらず、大きな経済発展を遂げてきたのは、「郵便貯金・公的年金の財政投融資への預託義務」という、諸外国がうらやむような日本に独自の優れた金融制度を持っていたからである。

また、「郵便貯金・公的年金の財政投融資への預託義務」というこの制度は、「護送船団方式」という政・官・民(業)が渾然一体となった、日本に固有のもう一つの制度と表裏一体の関係にあった。

「郵便貯金・公的年金の財政投融資への預託義務」や「護送船団方式」という行財政制度には、明らかに社会主義的な側面が含まれていた。

郵政民営化以前の日本は、純然たる資本主義国家ではなく、資本主義と社会主義を折衷した国だったのだ。

日本が初めから純然たる資本主義国家であったというのは事実ではない。

郵政民営化や、90年代以降の構造改革によって、日本は純粋な資本主義の国に改変させられたのだ。

日本において「郵便貯金・公的年金の財政投融資への預託義務」や「護送船団方式」という、資本主義と社会主義を折衷したかのような独特の行財政制度が可能だったのは、日本の長い歴史を通して培われた、政・官・民が相互に信頼しあう国柄が存在していたからである。

冷戦終結以降、「郵便貯金・公的年金の財政投融資への預託義務」や「護送船団方式」という日本独自の行財政制度を廃止するようにアメリカが執拗に要求するようになったのは、これらの制度こそが日本の強みであることを彼らが十分に理解していたからに他ならない。

(冷戦が終結した直後の90年台の初め、アメリカのCIA長官は、経済力を強めた日本やドイツのような国こそが、ソ連に変わるアメリカの新しい仮想敵国であると公言している。)

参考記事: WJFプロジェクト「なぜ、こんなことになったのか」(4)(2015年12月13日)

日本人は、アメリカの執拗な要求に屈し、またメディアやマスコミに騙されて、わざわざこれらの優れた制度を廃止してしまった。

2001年(平成13年)「資金運用部資金法等の一部を改正する法律案」により、「郵便貯金・公的年金の財政投融資への預託義務」は廃止され、政府は、財政投融資の資金を必要とする際には「財投債」という国債を発行して、資金を民間から借り受けなければならなくなった。

国民が蓄積した巨額の資産がありながら、かつてのように国が自由に活用することが許されない。

この、日本にとってまったく新しい事態は、白隠禅師の「坐禅和讃」に記された言葉の通りであった。

衆生本来仏なり  水と氷のごとくにて
水を離れて氷なく  衆生の外に仏なし
衆生近きを知らずして  遠く求むるはかなさよ
たとえば水の中に居て  渇を叫ぶがごとくなり
長者の家の子となりて  貧里に迷うに異ならず


政・官・民が、渾然と一つの共同体を形成していた時代は終わり、政府と国民、政府と民間企業は、二つにきっぱりと切り分けられた。

日本が純然たる資本主義国家になったのはこのときである。

(つづく)
*
関連記事

コメントの投稿

非公開コメント

WJFプロジェクトについて
ご寄付のお願い
作品リスト
政治的立場
WJFプロジェクトは、日本の主権、伝統、国柄を守る保守的な観点から、安倍政権が推し進めるTPP参加、構造改革、規制緩和、憲法改正、安保法制、移民受入などのグローバル化政策に反対しています。
TPP交渉差止・違憲訴訟の会
YouTube
WJFプロジェクトの動画作品は以下のYouTubeのチャンネルでご覧になれます。

お知らせ
アクセス・カウンター


今日の一言
蓮舫の二重国籍問題のジレンマ

違う入り口を選んだハズなのに、ドアを開けると、同じ出口につながっている。
最新記事
コメント
<>+-
アーカイブ


RSSリンク
RSSリーダーに下のリンクを登録されると、ブログの記事やコメントの更新通知を受け取ることができます。