郵政民営化がもたらしたもの(1)

日本が一つの共同体であった時代の終わり。
今から振り返れば、郵政民営化とは、明治維新に匹敵するような時代を画する変化であったと言える。

なぜなら、それは、これから私たちが本格的にむかえつつある「国家が国家であることをやめてしまう時代」にむけての確実な一歩だったからだ。

郵政民営化から現在に至る日本を、明治時代から郵政民営化までの日本と比較すると、ある本質的な変化が生じていることに私たちは改めて気づかされる。

郵政民営化以前の日本では、政府と国民が良くも悪くも一体となって、一つの共同体であるかのように国作りが行われていたのに対し、郵政民営化以後の日本では、政府と国民が二つに切断され、政治が日本人の根幹とは無関係な抽象的でよそよそしい営みとして行われるようになってしまった。

この変化は、単なる主観的な印象ではなく、実際の制度上の改変を通して具体的な形をとって生じたものである。

明治時代から郵政民営化までの日本では、国民が汗水流して働きこつこつと蓄えた貯金を、政府が「第二の予算」としてそのまま運用し、電力・海運・鉄鋼・石炭などの基幹産業の開発、中小企業や農林漁業等の産業支援、教育や福祉の充実、国土保全・災害復旧、地域開発、道路建設、生活環境整備、住宅建設支援など、国家建設と国民生活のために活用する制度が存在していた。

明治時代に確立された、日本に固有のこの制度を、「郵便貯金・公的年金の財政投融資への預託義務」と呼ぶ。

この制度について、簡単におさらいしておこう。

財政投融資の歴史(1)

1875(明治8)年に駅逓局貯金(後の郵便貯金)が設置される。1878年に大蔵省国債局に駅逓局貯金が設けられて運用が始まり、1885年には同省に預金部が設置される。 当初は国債中心の運用だったが、明治時代中期から大正時代にかけて、国内の産業資金融資や国策会社への投資などに対象を広げる。 日中戦争から第二次世界大戦にかけては、国債の引受けに加えて国策会社や軍需産業への資金供給、海外における権益 確保のための投資なども多くなり、戦争遂行のためのシステムとして機能。 1951(昭和26)年に預金部は資金運用部に改組され、種々の政府資金の統合運用が行われるように。1953年 度には財政投融資計画の策定が開始されるとともに、産業投資特別会計が設置される。 産業投資特別会計は2008(平成20)年度に、財政融資資金特別会計と統合して財政投融資特別会計に。

運用の沿革
 発足当初の1953年度は「基幹産業」が約3割を占める。 日本開発銀行を通して四大基幹産業(電力、海運、鉄鋼、石炭)を担う民間大企業に融資。 高度成長期(1955~75年度)には基幹産業の割合が低下。他方で住宅、生活環境整備、中小企業、道路の割合が上昇。  高度成長終了からバブル経済の時期(1975~90年度)には住宅と道路の割合が上昇。 バブル経済崩壊後(1990~2000年度)には、住宅の割合がピークに到達。 住宅金融公庫(後の(独)住宅金融支援機構)を通じて個人に融資。





(出典:高崎経済大学天羽正継准教授「 財政学II 第10回 財政投融資(2)財政投融資の歴史と現状」より )


「郵便貯金・公的年金の財政投融資への預託義務」は、単なる行財政上の一制度であっただけではなく、世代や時代や地域を越えて日本人を一つの共同体の一員とみなす、相互扶助的な日本の伝統的な国家観に根ざしており、経済学や行政学の範囲を超えて、精神的、文化的な意味すら帯びるものであったと私は考える。

(つづく)
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晋三よ!国滅ぼしたもうことなかれ

今から思えば、郵政民営化に反対して、小泉首相と真っ向から対立していた亀井静香氏は、これが国家崩壊への元凶となることを熟知していた数少ない政治家でした。
広島の選挙区に刺客として新自由主義の権化である堀江貴文を送られたものの、これをなんとか撃退して、政界に踏みとどまり、いったんは郵政民営化に歯止めをかけました。
亀井氏は、その著書「晋三よ!国滅ぼしたもうことなかれ」で、新自由主義の行き着く先は国家崩壊であることを強調し、「右でも左でもない。俺は土俗の政治をする!」と主張しています。WJFさんが土人と呼ばれたいと書かれていたことに通じるものがあるなと思いました。
最近、あまり名前を聞かなくなりました。現役とはいえ80歳の高齢。彼の志を継ぐ政治家が出現してほしいところです。
いや、政治家に期待せず、我々一人ひとりが声を上げていく時期にきているのだと思います。

日本の水道事業を、全て民営化

『安倍自民党が日本の水道事業を、全て民営化しようとしています』
http://blog.livedoor.jp/zabu2233/archives/1062000362.html

「水道事業民営化の問題点」
現在、世界の水サービス市場4分の3はフランスのビベンディ社、スエズ社、ドイツのRWE社によって占められている。これらの巨大な多国籍企業による水道事業の独占は、さまざまな問題を生んでいる。営利を追求する水企業は、運営コストの回収と利潤確保のため、水供給にかかるすべてのコストを消費者の使用料金でまかなわれるような価格設定をしたため、水道料金の値上げが世界中で起こっている。事実、ボリビ アのコチャバンバ市では、民営化によって水道料金が2~3倍になったという事例が報告されている。貧しい人たちは高騰した水道料金を払うことができないため、水へのアクセスが難しくなってしまう。企業の勝手な判断で採算が合わないとみなされ、最貧困地域への水供給の切り捨ても起こっている。
安全な水へのアクセスが難しくなった結果、不潔な水を取らざるを得なくなり、健康面に悪影響も及ぼしている。ガーナでは民営化されてから川の水を飲んだせいで疾患率が3倍にもなってしまった。川や地下水からの取水が進みすぎて、川の流量の減少や地下水の枯渇、地盤沈下など環境問題への影響も懸念されている。このように水道事業の民営化は、最貧困層の安全な水へのアクセスを困難にし、水が高く売れる地との不平等がさらに広がる。
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ええと、簡単に言うとつまり、

安倍「これから更に生活苦しくしてあげるよ?」

…ってことですね?
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