日本を映す鏡、台湾(1)
台湾を見ると、日本が分かる。
大陸の周辺に位置する島嶼国家という地理的な位置づけが似ているためか、台湾が抱えている問題と日本が抱えている問題は、その構造がとても似通っています。
台湾を知ることによって、日本の抱える問題の本質や、日本や台湾を板挟みにしている、アメリカや中国という二大グローバル国家の本当の姿や、日本がアメリカや中国と戦った理由を知ることができます。
台湾では、二つの勢力が争ってきました。
一つは、中国国民党を中心とする「泛藍連盟」。
(藍色は、中国国民党のイメージカラー)
台湾を中国の一部として位置づけた上で、中華人民共和国と平和的に交渉しつつ、最終的には中華民国の主導による中国の統一を目指す立場です。「中華民国在台湾」(台湾にある中華民国)
この立場は、1945年8月15日の「台湾光復」以降、中国大陸から台湾に渡ってきた中国人、特に、第二次世界大戦後に起きた中国での国共内戦に敗れて台湾に逃れてきた中国国民党政府および中国国民党軍(国民革命軍)の関係者をルーツにもつ、中華文明の中に自己のアイデンティティーを見いだす、いわゆる「外省人」によって支えられています。
もう一つは、民進党を中心とする「泛緑連盟」。
(緑色は、民進党のイメージカラー)
台湾が歴史的に中国の一部であった事実はないと主張し、中華民国の台湾土着化、つまりは台湾の独立を目指す立場です。
1945年8月15日の「台湾光復」(日本の降伏)以前から台湾に住んでいた人々をルーツにもつ、いわゆる「本省人」が、この立場を支えています。
(「本省人」は、ポリネシア系の台湾原住民系本省人と、古い時代に大陸から渡ってきた漢族系本省人から成り、さらに漢族系本省人は、中国大陸における故地の違いにより福佬人と客家人の二つに分類されます。)
しかし、上記の対立の図式はあくまで従来のものであり、ルーツに関わらず、「自分たちは台湾人だ」という国民意識を抱く台湾人(特に若い世代)が近年増えています。
そのような国民意識の変化を反映して、今年の一月に行われた台湾総統選では、民進党の蔡英文氏が勝利し、八年ぶりに政権の座に帰り着きました。
これまで、台湾を二分してきた以上の二つの立場は、
というように簡略化できるわけですが、台湾人が戦後、苛烈な形で直面してきた「文明」と「土着」(野生)の間の相克という問題と、まったく同じ性質の問題に、日本人も神代の昔から向き合ってきたことを、当ブログは、「グローバリズムと神道」という記事のシリーズの中で、繰り返し論じてきました。
日本も、台湾と同様に、
という、二つの傾向の相克と融和の中から、独特の歴史を紡いできました。
縄文文明と弥生文明の混成体として築かれてきた日本文明は、台湾人がこの問題に直面するはるか以前から、先住民と後から日本列島に上陸してきた人々が、どのように折り合いをつけながら共に生きていくという問題を、長い時間をかけて克服してきた来歴を持っています。
しかし、現在の日本ではある倒錯が起きています。
日本の右派の人たちは、台湾の民族性を重んじる「泛緑連盟」を熱烈に支持しています。
これは、ごく当然のことであると思います。
しかし、彼らは、自国の問題に関しては、日本人としての土着性・民族性を守ろうとするどころか、「文明」という全体秩序に狂信的なまでに日本を帰属させようとする、安倍晋三というグローバリストを熱烈に支持しています。
日本の右派が、台湾の「泛緑連盟」を支持するのであれば、移民政策を推進し、TPPやRCEPやFTAAPの実現によってアメリカや中国との一体化を目論み、日本人の民族性を根こそぎにしようとする安倍晋三に、反旗を翻さなくてはならないはずなのですが。
台湾とは対照的に、日本では、国境や国籍を超えた「文明」という全体秩序に与そうとする立場に右派が立ち、それとは逆に、ローカルな領域に留まる人々の権利や暮らしや文化を守ろうとする立場に左派の人々が立つという、左右あべこべの倒錯した現象が見られます。
参考記事:
安倍晋三は中国と戦っていない(2015年8月7日 )
台湾を知ることによって、日本の抱える問題の本質や、日本や台湾を板挟みにしている、アメリカや中国という二大グローバル国家の本当の姿や、日本がアメリカや中国と戦った理由を知ることができます。
台湾では、二つの勢力が争ってきました。
一つは、中国国民党を中心とする「泛藍連盟」。
(藍色は、中国国民党のイメージカラー)
台湾を中国の一部として位置づけた上で、中華人民共和国と平和的に交渉しつつ、最終的には中華民国の主導による中国の統一を目指す立場です。「中華民国在台湾」(台湾にある中華民国)
この立場は、1945年8月15日の「台湾光復」以降、中国大陸から台湾に渡ってきた中国人、特に、第二次世界大戦後に起きた中国での国共内戦に敗れて台湾に逃れてきた中国国民党政府および中国国民党軍(国民革命軍)の関係者をルーツにもつ、中華文明の中に自己のアイデンティティーを見いだす、いわゆる「外省人」によって支えられています。
もう一つは、民進党を中心とする「泛緑連盟」。
(緑色は、民進党のイメージカラー)
台湾が歴史的に中国の一部であった事実はないと主張し、中華民国の台湾土着化、つまりは台湾の独立を目指す立場です。
1945年8月15日の「台湾光復」(日本の降伏)以前から台湾に住んでいた人々をルーツにもつ、いわゆる「本省人」が、この立場を支えています。
(「本省人」は、ポリネシア系の台湾原住民系本省人と、古い時代に大陸から渡ってきた漢族系本省人から成り、さらに漢族系本省人は、中国大陸における故地の違いにより福佬人と客家人の二つに分類されます。)
しかし、上記の対立の図式はあくまで従来のものであり、ルーツに関わらず、「自分たちは台湾人だ」という国民意識を抱く台湾人(特に若い世代)が近年増えています。
2009年12月16日の天下雑誌による民族帰属意識調査では、
台湾人であり、中国人ではない=62%
台湾人であり、中国人でもある=22%
中国人であり、台湾人ではない=8%
同世論調査では、18-29歳の若者の民族帰属意識について、
台湾人であり、中国人ではない=75%
台湾人であり、中国人でもある=15%
中国人であり、台湾人ではない=10%未満
(出典: wikipedia 「近年の調査にみる台湾人の民族帰属意識」)
そのような国民意識の変化を反映して、今年の一月に行われた台湾総統選では、民進党の蔡英文氏が勝利し、八年ぶりに政権の座に帰り着きました。
これまで、台湾を二分してきた以上の二つの立場は、
1. 中華「文明」という全体秩序に帰属しようとする人々
2. 土着の民族性を自覚し、その固有性を守ろうとする人々
というように簡略化できるわけですが、台湾人が戦後、苛烈な形で直面してきた「文明」と「土着」(野生)の間の相克という問題と、まったく同じ性質の問題に、日本人も神代の昔から向き合ってきたことを、当ブログは、「グローバリズムと神道」という記事のシリーズの中で、繰り返し論じてきました。
日本も、台湾と同様に、
1. 天神的原理: 白鳳時代や明治体制に見られた「文明」という全体秩序に傾斜しようとする傾向
2. 地祇的原理: 自然に根ざす土着性や民族性を重んじようとする傾向
という、二つの傾向の相克と融和の中から、独特の歴史を紡いできました。
縄文文明と弥生文明の混成体として築かれてきた日本文明は、台湾人がこの問題に直面するはるか以前から、先住民と後から日本列島に上陸してきた人々が、どのように折り合いをつけながら共に生きていくという問題を、長い時間をかけて克服してきた来歴を持っています。
しかし、現在の日本ではある倒錯が起きています。
日本の右派の人たちは、台湾の民族性を重んじる「泛緑連盟」を熱烈に支持しています。
これは、ごく当然のことであると思います。
しかし、彼らは、自国の問題に関しては、日本人としての土着性・民族性を守ろうとするどころか、「文明」という全体秩序に狂信的なまでに日本を帰属させようとする、安倍晋三というグローバリストを熱烈に支持しています。
日本の右派が、台湾の「泛緑連盟」を支持するのであれば、移民政策を推進し、TPPやRCEPやFTAAPの実現によってアメリカや中国との一体化を目論み、日本人の民族性を根こそぎにしようとする安倍晋三に、反旗を翻さなくてはならないはずなのですが。
台湾とは対照的に、日本では、国境や国籍を超えた「文明」という全体秩序に与そうとする立場に右派が立ち、それとは逆に、ローカルな領域に留まる人々の権利や暮らしや文化を守ろうとする立場に左派の人々が立つという、左右あべこべの倒錯した現象が見られます。
参考記事:
安倍晋三は中国と戦っていない(2015年8月7日 )
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