歴史を形作る目に見えない力について(18)

二つの普遍性のはざまで(3)
役小角の追放事件から白鳳時代にたち現れた、日本の三重構造。



これを、以前、下のような、より一般的な概念で捉えなおしました。







上掲の様々な三重構造は、「人は天と地の間を生きている」という形で、寓意化して捉えることも可能です。



前々回の記事で、「自然」や「深層心理」や「過去」という一番下の層が、普遍性を帯びていたり、普遍性を志向するということがらを指摘しました。

今回は、「文明」や「知性」や「未来」という三重構造の最上位を占める概念が、普遍性を帯びていたり、普遍性を志向するという点にふれたいと思います。

話が冗長にならないように要点を簡略に述べていきます。

紀元前後、ユーラシア大陸の西端と東端では、二つの「文明」による地域統合が進みました。

一つはローマ帝国による地域統合であり、もう一つは漢による地域統合です。

この二つの統合された地域は、シルクロードという交易ルートによって結ばれ、当時の移動・通信技術の範囲内ではありましたが、ユーラシア大陸上に一つのグローバル化した世界が成立しました。

その後、395年にローマ帝国は東西に分裂し、西ローマ帝国は、ゲルマン人の侵入を受けて476年に崩壊します。

しかし、ローマ帝国が政治的に実現した統一された普遍世界の理念は、ローマ・カトリック教会によって引き継がれました。「カトリック」(καθολικός, Catholicus)は、ギリシア語やラテン語で「普遍」を意味します。

一方、ユーラシア大陸の東端において、漢帝国の統一を支えたのは儒教思想であり、その崩壊をまねいた一因は、仏教や道教という新しい思想の広がりによって儒教思想が相対化されていった事態にありました。

ゲルマン民族の侵入を受けた西ローマ帝国と同じように、漢の滅亡後、中原は、殊に五胡十六国時代や南北朝時代に、鮮卑や匈奴という周辺異民族の侵入にさらされ、北魏のみならず、隋や唐も鮮卑の血を引く人々による王朝であったと言われてています。

西ローマ帝国の崩壊後、ゲルマン人という異民族をも包摂する形で、ローマ・カトリック教会がローマ帝国が実現した統一の理念を引き継いだのと同じように、漢帝国の崩壊後、漢が実現した統一の理念を引き継いだのは、律令や冊封体制でした。

律令や冊封体制は、漢が立脚していた儒教思想に基づきながら、五胡十六国時代や南北朝時代という異民族による王朝が乱立する時代に、支配民族が入れ替わっても互換可能な中原の統一システムとして洗練、強化されていき、隋・唐の時代に完成されていきます。

白鳳時代に、倭国が唐の律令制度を導入して「日本国」として再編された出来事は、このような、「文明」による統一と普遍の実現を志向する、世界史的な流れの中に位置づけられます。

ユーラシア大陸の西端で生まれ、「キリスト教」に継承されていった普遍的理念は、その後、大航海時代を経て新大陸に到達し、原住民たちの「自然」に根ざした、野性的な文化や共同体を破壊しながら、新しい人工的な移民国家を次々に樹立していき、「パックス・ロマーナ」(ローマの平和)に比すべき「パックス・アメリカーナ」(アメリカの平和)をもたらした、アメリカ合衆国というローマ帝国の再来を実現させました。

ユーラシア大陸の東端で生まれ「中華体制」として形式化され実体化された普遍的理念は、いくつもの王朝の交代を経ながら、現在の中華人民共和国によっても継承されています。

このユーラシア大陸の西と東で誕生した二つの普遍的理念は、第二次世界大戦前からすでに始まり、ニクソン・ショック後に一層強化されたアメリカ合衆国と中国の接近と融和によって一つにむすばれて地球を取り囲み、言葉の真の意味でグローバルな世界を実現させようとしています。

参考記事: アメリカと中国、その親和性(2013年9月5日)

以上が、「文明」や「知性」や「未来」が、普遍性を帯びていたり、普遍性を志向するという世界史的な経緯の荒削りな要約です。

これまでの話を、宗教的な側面に着目し、かなり単純化して図式化すると下のようになります。(キリスト教も仏教も、それぞれ全体性をもった宗教なので、一つを専ら知性の側に、もう一つを専ら深層心理の側に配置することは本当はできませんが、それでもやはり、キリスト教にはロゴスという言語知への傾斜が見られ、仏教には非言語知への傾斜が見られます。)



国際政治的な側面に着目し、かなり単純化して図式化すると下のようになります。



国内政治的な側面に着目し、かなり単純化して図式化すると下のようになります。(この図式に異論がある人たちもいることでしょうが、おおまかには、右翼は、原発や最先端兵器や資本の原理のような「文明」に傾斜する傾向を持ち、左翼は脱原発や地域共同体や環境の重視といった「自然」に傾斜する傾向があります。)



以前、「一瀉千里の奔流となり得る日(10)」(2015年11月22日)という記事で取り上げたことがありますが、下の地図のように、ユーラシア大陸で生まれた「文明」に基づく普遍的世界と、環太平洋地域に広がっていた「自然」に基づく普遍的世界。これら二つの普遍的世界の狭間に誕生したのが、日本という、人類史上大変めずらしいハイブリッドな特質をそなえた「自然国家」です。



日本に原爆が落とされたことの意味も、日本がアメリカや中国と戦ったことの意味も、日本をすっかり洗い流すまで勢いをましつつあるグローバル化の潮流も、このような世界史的な文脈の中で説き明かされなくてはなりません。

参考記事: 一瀉千里の奔流となり得る日(9) (2015年11月9日)
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