歴史を形作る目に見えない力について(1)

地祇的原理・伊豆・武家政権・興亜観音。
鎌倉幕府が1232年に制定した武家のための法令である「御成敗式目」は、次のような起請文(誓いの言葉)で締めくくられます。

てへれば、条々子細かくの如し。もし一事たりと雖も、曲折を存じ、違犯せしめば、梵天帝釈、四大天王、惣じて日本国中六十余州の大小神祇、殊に伊豆箱根両所権現、三島大明神、八幡大菩薩、天満大自在天神、部類眷属、神罰冥罰、各罷り蒙るべきものなり。よつて起請件の如し。

(出典: 御成敗式目)

松井石根陸軍大将が、昭和15年に、日本と中国、双方の戦没者を「怨親平等」に弔うために建立した興亜観音は、静岡県熱海市の伊豆山という土地にあります。



(興亜観音から見下ろす相模湾と伊豆半島)



(休憩室から見る興亜観音の本堂。上部に掲げられている絵は、黄河大洪水の復興作業の様子を描いたもの。)



(本堂や休憩所は熱田神宮の余材で作られた。左側の額は、北京の中国仏学研究院院長から松井石根大将に送られたもの。「東亜救星」(東亜を救う星)と書かれている。右側の絵は、南京市の俯瞰図。)

伊豆山は、「御成敗式目」の中で、鎌倉幕府が「日本国中六十余州の大小神祇」の筆頭に掲げた「伊豆箱根両所権現」の一つ伊豆山神社(走湯権現)が存在する土地であり、1188年に源頼朝が開始して以来、1327年まで、鎌倉幕府の各将軍は、毎年正月に、多くの御家人を引き連れて、伊豆山神社(走湯権現)と箱根神社(箱根権現)に「二所詣」(にしょもうで)を行う慣習を守ったことが、『吾妻鏡』という歴史書に記されています。



(伊豆山神社拝殿。現在、奈良の国立博物館では、「伊豆山神社の歴史と美術」という特別展が開催されている。)

興亜観音が立つ伊豆半島という土地は、鎌倉幕府を興すことによって、「天神的勢力」と「地祇的勢力」の間の二度目の「国譲り」(政権交代)を果たした源頼朝の配流地であり、鎌倉幕府が終始、聖地と見なした土地ですから、「天神的原理」と「地祇的原理」の間の相克と和合の物語として日本史を解釈しようとする「神祇史観」にとって、看過することのできない重要な土地ということになります。

また、これから解き明かすように、伊豆半島は、出雲や、熊野という「地祇的原理」が支配的であった土地と、深い因縁をもっており、源頼朝が、この地で旗揚げしたことは偶然であるとは思えません。

あたかも、地底からマグマが噴出するように、根の国・底の国に封印されていた「地祇的原理」という目に見えない力が、伊豆(出づ)という土地に噴出し、武士たちを動かした。

駿府(今の静岡市)の今川氏のもとで人質として幼年時代を過ごした徳川家康は、伊豆に配流された源頼朝の境遇に自分を重ね合わせ、頼朝を終生理想とすることで江戸幕府を開いたことが知られていますから、鎌倉時代から江戸時代まで一貫して、同じ「原理」(力)が支配的な時代であったということができます。

「縄文から現代に至る日本人の歴史的歩みの全体」の中で伊豆という土地のもつ宗教学的な意味を説き明かすことは、明治体制という、古代の律令体制以来「天神的原理」が再び主流となった時代の中で、松井石根が「自他平等」を唱えたことの意義と問題点にも、なにがしかの光を当てることになるでしょう。

下の事項について語られます。



白鳳地震と伊豆諸島の造山活動・伊豆毛と出雲と伊豆の真屋・伊豆卜部氏(ウミガメと折口信夫)・三島神の漸進的北上・役小角と伊豆半島・役小角と賀茂氏(三輪氏)と大物主・役小角と伊豆半島・修験道場としての熊野と伊豆・反体制としての修験道・修験道と神仏習合・キノクニとキノミヤ信仰(紀伊半島と伊豆半島)・役小角の再来としての文覚・文覚と源頼朝・源頼朝と徳川家康・「明神」か「権現」か(家康の諡論争)・明治維新と廃仏毀釈・興亜思想と八紘一宇・興亜観音と自他平等・自他平等(仏教の無分別智)と地祇的原理(対称性の論理)



(伊豆諸島から三島神(御島神)が勧請された最初の地、伊豆半島最古の神社とされる伊豆下田の伊古奈比咩命神社)



(河津桜)

歴史は、少なくとも日本の歴史は、強大な権力を握る一部の人間の企図によって形作られたものではなく、個々の人間を超えた「力」(その実体の多くの部分は歴史の先行者たちが残した遺産や人々の無意識にあるものや自然の力)によって形成されてきました。

そういう「力」が、実際に歴史の中に働いていたことが確かめられるならば、私たちは、安倍政権という一部の権力者たちが目論む売国に対して反対の声を上げる必要はあるものの、決してたじろぐ必要はないように思えてくるのです。
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文明と神話

>今後200年で人類は人工知能ロボットと共に太陽系の果てまで経済圏を広げます。その時も、日本国とご皇室は存在するべきと考えています。更に1万年先にも、人類の中心に燦然と輝く太陽のように、ご皇室は存在しているべきと考えます。人類の幸福の為に。

「日本」という国名が作られてから、約1300年。文明は大きく進みましたが、日本人の精神はさほど変化はしていません。その証拠に私たちはいまだに、その当時に編まれた万葉集の歌を原語のまま理解し、その当時と同じように、出雲大社や大神神社や地元の氏神様にお参りします。

文明のいきつく果てについて思い巡らすことも大切ですが、同時に、来し方を振り返り、古い伝統や神話の中に、日本をなりたたせてきた「力」を探索しようとする作業も大切なことであると思います。

>日本人のDNAとは何かが問われます。それは確実に他民族と異なる要素を含み、それを解明しておけば、移民混交の内にピュアジャパニーズが絶滅した後にも、遺伝子操作テクノロジーを使ってピュアジャパニーズの遺伝子を導入したクローン個体を培養し、ピュアジャパニーズの形質を受け継ぐ新人類を再生できるでしょう。

日本の伝統や文化や精神は、遺伝子操作によって守られるものではなく、日本語の中に産み落とされ、日本の社会や共同体の中で育まれる中で、無意識の中に自然に継承されていくものです。

応答ありがとうございます

WJFさま、いろいろ教えて頂きありがとうございます。
とても参考になりました。自分の知識の無さを痛感します。

匿名様さま、御懸念ごもっともです。

>日本人が後世まで存続できるとするならば、楽観視も希望も捨て去った先、本当の絶望と一体化できた時であろうと思います。

私も前途は容易ではないと思います。しかし完全に絶望してしまったら生存の意欲もなくなります。希望は常にある。
私は1万年先の未来を見ます。
今後200年で人類は人工知能ロボットと共に太陽系の果てまで経済圏を広げます。その時も、日本国とご皇室は存在するべきと考えています。更に1万年先にも、人類の中心に燦然と輝く太陽のように、ご皇室は存在しているべきと考えます。人類の幸福の為に。
そこに至るまでの人類の大変動と文明の変容を想定すれば、TPPなど序の口なのです。その程度の変動で潰れるものならば、今後の人類大変革期一千年も生き延びることができないでしょう。
TPPは試練ですが、必要な飛躍の為の前向きなステップと捉えるべきです。
遺伝子操作テクノロジーや生殖医療の大変革により人種や人間の形態そのものも、今後1000年で大きく変わる。
その時代の日本人とは?
日本人のDNAとは何かが問われます。それは確実に他民族と異なる要素を含み、それを解明しておけば、移民混交の内にピュアジャパニーズが絶滅した後にも、遺伝子操作テクノロジーを使ってピュアジャパニーズの遺伝子を導入したクローン個体を培養し、ピュアジャパニーズの形質を受け継ぐ新人類を再生できるでしょう。
TPPごときで、もしも日本人が消え去るのであれば、そもそも残る価値など最初から無かったのだと考えて諦めるべきです。
しかし私はそうではないと信じる。
1万年先まで存続する戦略を考え、その為の日本大変革と進歩のステップを今日よりスタートさせましょう。

WJFさんとブルーアルジーさんへ

>不敬な喩えを許容して頂くならば、金の卵を産むガチョウを簡単に殺すようなことはしないでしょう。
>それをしそうなのは、今のところ支那共産党と南朝鮮人ですが、現時点で、どちらもTPPには加わっていないのです。

もう既に韓国はTPP参加の旨を発表しています。

そしてシンガポールは支那人の、華僑の国であり、カナダ・オーストラリア・アメリカ等の国々は大量の支那人移民に席巻されている真っ最中です。
これらの国との国境を無くす、ビザなしで参加国間の移動を自由にするというTPPが始まれば、日本に支那人が押し寄せない訳がありません。

加えて書くと、支那人・朝鮮人は長い時間を掛けて反日教育を受けてきた人達なので、日本を実行支配した暁には、皇室など残す気は更々ないと思います。

残すとしても日本人という民族を根絶するまでの目そらし位の価値でしょうね。


>仮にTPPによって日本の国家制度が根底から改変されても、律令制が崩壊していったのと同じ事が再びこの国におきるだろうと、期待しています。

たった70年です。たった70年で日本を守る為に命を投げ出そうとする人間は指折り数えるほどしか居なくなりました。それほど教育・メディアを使った敵の洗脳、在日外国人を使った武力による恫喝、数々の口封じが強力に作用し、日本人は身も心も破壊され尽くされました。

それと、WJFさんの言う当時の時代は、唐の支配体制は完全ではなく、それ故に唐の支配下に入っても統治者全員が支那人になる等の事態にならず、ある種の民族としての独立が維持できた運のいい時代です。唐が滅びるまでに日本各地の軍閥の増強も済み、唐が滅んだ後は難民の襲来を最小限の被害で留めることができた。一番は唐の人間に日本人が恨まれてなかったのも大きいと思います。眼中に無かったと言うのが正しいですが。なんにせよ、支那人は恨みを忘れない民族ですから、恨みを残すとそれを理由に後世に侵略してきます。

ですから、今の日本の現状は最悪だと言えます。

一番日本への直接的侵略(人口侵略)に出ている支那人は、世界最大の反日教育の国で、支那人の多くは「日本人は殺しても良心の呵責がない」とネットなどで書き込みしています。恨みの力は充分。日本を余裕で破壊し尽くせる位は蓄積されている。

対して日本人はと言えば、敗戦で全ての軍備と多くの戦える兵士を失った上で、GHQの手下である三国人(支那人・朝鮮人ほか)に暴力で社会を乗っ取られ、それからは三国人の都合で洗脳・弱体化・洗脳・弱体化・・・の繰り返し。子供の体を弱くするワクチンを強制的に打たされ、食品は遺伝子組み換えで病気になりやすくなり、最後は食料も水も外資に奪われようとしている。政府も行政も率先して売国をしているというのは、つまるところ、それら全員が三国人の仲間である事に他ならない。簡単な話です。

日本人の破壊、それの最終兵器がTPPである。これに尽きます。
けれどTPPを使わずとも、他の方法でも今の日本を潰す事が容易なのも事実です。

楽観視の悉く、希望の悉くが無駄です。

日本人が後世まで存続できるとするならば、楽観視も希望も捨て去った先、本当の絶望と一体化できた時であろうと思います。

No title

>それらを鑑みて、グローバル企業もまた、戦国時代の諸国の大名のように、ご皇室と良好な関係を望むであろうと予測するまでです。
>TPPとはブロック経済圏です。
>そのブロックの中で経済的利益を最大化するようにシステムが再構成されるというだけのことです。
>或いはNWOかもしれないが、それが徳川の世とどれほど違うのか?徳川の治世とは世界最初のNWOではなかったのか?
>歴史からは多くを学べます。


世界初のNWOは、東洋においては、中華帝国の生み出した冊封体制であり、日本も律令制度を受け入れることでこの秩序に参加しました。

徳川の治世は、むしろ、国造という各地の地方豪族が朝廷から統治権を認められていた、律令制導入以前の日本の姿に似ています。

白村江の戦いで唐と新羅の連合軍に敗れたことが、日本にも唐と同様の国家体制を整備する必要性を当時の為政者たちに実感させました。そのために日本は、唐から律令制度を導入して、日本をグローバル化し、構造改革を行いました。

それは、黒船による砲艦外交や、薩英戦争や下関戦争の敗北の結果、明治維新を行ったことにも似ていますし、第二次世界大戦でアメリカに敗れた日本が、戦後アメリカの制度を受け入れていったことにも似ています。

しかし、日本は一旦中国風の政治制度を受け入れたままでは終わりませんでした。

律令制以前から、もともとあった気質や伝統(地祇的原理と私は呼んでいます)が、長い時間をかけて、律令制という中華風の人工的な国家体制を内側から解体させ、もともとの日本の姿を回復させていったのだと思います。

「地祇的原理」は、今も日本社会の中から消え去ってはいません。

仮にTPPによって日本の国家制度が根底から改変されても、律令制が崩壊していったのと同じ事が再びこの国におきるだろうと、期待しています。

No title

見えない力に頼っていては何も変わらない
政治は選挙で変えるしかない

ご返信

>日本の国が消滅するのに、何故、皇室の護持や、神道の維持が継続出来ると思っておられるのでしょうか?

皇紀2670さま、確かに楽観はできないでしょう。
しかし、TPPの本質は国家よりグローバル企業の利益を優先しようという枠組みです。それは、アメリカ政府であろうが、その他の政府であろうが同じこと。
とすれば、国家対ご皇室(伝統、文化)の関係であったものが、グローバル企業対ご皇室(伝統、文化)に代わるというパワーチェンジが発生する事態になることを意味します。
即ち、下賤な言い方をすればグローバル企業にとってご皇室(伝統、文化)に利用価値=経済的生産価値があると見做されれば、グローバル企業はそれを潰すことはしないでしょう。
もしも、グローバル企業にとって、ご皇室が金の卵を産んでくれる価値変換機能、信用創造機能を持つ重要なシステムになり得るとしたら?
破壊するどころか、保護され、拡張すらされるでしょう。
我が国の歴史の中で、過去、何故、ご皇室が存続し得たのか?
或いはマッカーサーが、激しく葛藤しながらもかろうじてご皇室を残したこと。。。
それらを鑑みて、グローバル企業もまた、戦国時代の諸国の大名のように、ご皇室と良好な関係を望むであろうと予測するまでです。
TPPとはブロック経済圏です。
そのブロックの中で経済的利益を最大化するようにシステムが再構成されるというだけのことです。
或いはNWOかもしれないが、それが徳川の世とどれほど違うのか?徳川の治世とは世界最初のNWOではなかったのか?
歴史からは多くを学べます。
ならば、環太平洋プロック経済圏の支配者たちにとって、ご皇室がNWO支配の為のパワーを生み出す錬金術の卵にも見えるだろう、そのように愚考するのです。
不敬な喩えを許容して頂くならば、金の卵を産むガチョウを簡単に殺すようなことはしないでしょう。
それをしそうなのは、今のところ支那共産党と南朝鮮人ですが、現時点で、どちらもTPPには加わっていないのです。

ブルーアルジー氏へ

こんにちは。ブルーアルジー氏にお訊ね致します。

日本の国が消滅するのに、何故、皇室の護持や、神道の維持が継続出来ると思っておられるのでしょうか?

努力?浅学非才な私には、理解不能です。

TPP加盟後の近未来的悲観予想を心配している私は、ブルーアルジー氏の理論が、良く解らないので、皇室の護持や、神道の維持の具体的な方法をご教示いただければと思います。

宜しく御願い致します

TPP体制は新生大東亜共栄圏である

仮にTPP体制で国家が崩壊消滅したとしても、それはワーストな結果ではない。
日本人にとって最も重要なのはご皇室の護持と神道体系の維持であって、極端な場合、その根幹が生きたまま保存されれば国家や民族の揺らぎは最悪の事態までは進行しない。
よって大和民族本体が傾注すべきは、ご皇室の護持と神道体系の維持である。
太古から現代までを見れば、日本国に於いて政権や権力者、民族や言語の変遷は幾分幾多か存在している。
その歴史の核の中で一貫して居るのは唯、ご皇室と神道体系それのみである。
故に、仮として日本国が消滅しようが他国と合邦しようが、ご皇室と神道体系のみ護持されれば、究極的には最悪の事態を回避しえたとも言え、即ち本質としては何らの問題も無しなのである。
過去、その精神を持って、この大亜細亜に大東亜共栄圏は建設されようとしたのである。
よって、TPPを持って大東亜共栄圏たらしめるには、その内部に於いてご皇室と神道体系を繁茂させ、広域に浸透させれば足りるのであって、其の威光が遥々隔地までTPP域内に日本人の英知と努力、其の商業的力と共に及ぶ時、大東亜共栄圏は再び完成するのである。
これが安倍晋三の幻想する新生大東亜共栄圏である。
到来するTPP体制下に於いて、わが民族は再びその建設に励むのが、今後の一大戦略なのである。
この新たなる大東亜建設の事業に、我が民族は再び多くを掛けるのである。
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