垂直方向に町を探索する

伝統は日本人を助ける。
私たちは、自分の暮らす町のことをどれだけ知っているでしょうか。

どんな土地のどんな町であっても、私たちの足下には、長い時間をかけて先人たちが積み重ねてきた歴史が地層のように堆積しているのですが、私たちはふだんそのようなことには気づかず、アスファルトで舗装された道路を行き来したり、ショッピングモールに買い物に出かけたり、ごく限られた狭い範囲を、もっぱら水平方向に移動しながら生活しています。

私は、NHKの「ブラタモリ」という番組が好きなのですが、この番組の元ネタは、タモリとも親交のある宗教学者の中沢新一氏が雑誌「週刊現代」に連載していた『アースダイバー』です。

後に書物としてまとめられた『アースダイバー』は、東京のような近代的な街の形成に、縄文にまでさかのぼる過去の人間の生活の痕跡が大きな影響を与えていることを明らかにしています。

私たちも、タモリや中沢新一氏にならって、比較的簡単なやり方で、自分の暮らす町を「垂直方向」に探索することが可能です。

それは地元の神社・仏閣にお参りすることです。

私たちが生活を営む町の表層よりも、一段も、二段も、歴史的に古い地層が露呈している場所が、神社やお寺に他ならないからです。

自分の暮らす町と、歴史的に深いレベルで、よりきめ細かい関わりを持つことができるようになることは、神社・仏閣ににお参りすることの御利益の一つではないかと思います。

そんな御利益のおかげでしょうか。

二週間ほど前、地元の神社についたち参りにいったついでに、私は、神社の近くに、小さな手作り味噌のお店を見つけました。

もともとは農家だったお宅が、お味噌を専門に作るようになったとのことでした。

そこの金山寺味噌があまりにもおいしくて、あっというまになくなってしまったので、おかわりをしてきました。



金山寺味噌は、大豆と麦に、なす、大根、うり、しょうがなどの野菜をまぜこんで、発酵させて作るそうです。



同じお店で量り売りされている手作りのお味噌(米麹による白味噌)は、一年近く発酵させたものだそうです。

「長期熟成」をうたう、COOPの「国産素材の長期熟成生みそ」すらも、熟成期間は六ヶ月。

工場で大量生産で作られている市販の味噌の大半は、「温醸法」という方法で人工的に発酵期間を三ヶ月ほどに短縮して作られた味噌に、それ以上発酵が進まないようにアルコールや添加物を混ぜたものであり、酵母や乳酸菌は生きていません。

私が味噌に興味を持つようになったきっかけは、おなかの調子がわるくなったことなのですが、ヨーグルトなどを食べても一向に改善しなかったおなかの調子が、生味噌を食べるようになってから、いっぺんに改善しました。

手作りの味噌や、無添加の生味噌は、やはり市販の大半のお味噌とは違っています。

土鍋(私はご飯を萬古焼の炊飯用の土鍋で炊きます)で炊いたほかほかのご飯に金山寺味噌をのせて、一晩かけて丁寧に出汁を取り、手作りの生味噌で作った、野菜たっぷりの味噌汁と一緒にいただく。

これほどのごちそうはありません。

禅寺では、食事を用意する係のことを「典座」(てんぞ)と呼びますが、典座職の大切さを知ったエピソードを、道元禅師が次のように、記しています。

「私がかつて宋の天童山景徳寺で修行していた頃のことです。地元寧波出身の用ゆうという名の老僧が典座職に就いていました。私が昼食をすませ、東側の廊下を通って超然齋ちょうねんさいという建物に向かう途中、この老僧が仏殿前の庭で茸を干しているところに出会いました。

老僧は竹の杖を突き、頭に笠さえかぶっていない。強い日差しが照りつけ、庭の敷瓦は焼けつくような熱さです。老僧はしたたり落ちる汗をぬぐおうともせず、一心にきのこ干しの仕事をしている。いかにも辛そうに見えます。背中は曲がり、長い眉は真っ白です。

私は老典座に近づいて、お年を尋ねました。典座は『六十八です』と答えました。

そこで、私が『どうして、見習い僧か下働きの人を使わないのですか』と言ったところ、老僧は『他人にやってもらったら、わたしがやったことにはならないではないですか』と言いました。

私は、『たしかにご老僧のおっしゃるとおりです。しかし、こんなに日差しの強い時にどうしてそこまでなさるのですか』と尋ねました。すると、老僧はこう答えたのです。『いまやらなければ、いつやるというのですか』と。

私はなにも言えなくなりました。廊下を歩きながら、典座という職のたいせつさを思い知らされた次第です。」

(出典: 道元『典座教訓』現代語はこちらのサイトからお借りしました。)

味噌のみならず、伝統的な食は、日本人の心と体を助けてくれます。

粥有十利

一、 【色】 体の血つやが良くなり
二、 【力】 気力を増し
三、 【寿】 長命となり
四、 【楽】 食べ過ぎとならず体が安楽
五、【詞清辯】 言葉が清く爽やかになり
六、【宿食除】 前に食べたものが残らず胸やけもせず
七、 【風除】 風邪を引かず
八、 【飢消】 消化よく栄養となって飢えを消し
九、 【渇消】 のどの渇きを止め
十、【大小便調適】 便通も良い

(出典: 彼岸寺「コラム(3) お粥を食べて10の良いこと」)
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