左右の分水嶺としての慰安婦問題

騒ぎの中で、置き去りにされ続ける問題。
大日本帝国(明治体制)を、単に理想化し礼賛すれば、「右翼」の立場が生まれ、

大日本帝国(明治体制)を、単に唾棄し否定すれば、「左翼」の立場が生まれる。

これと全く同じように、

日本軍の慰安婦を、単に「売春婦」と呼べば、「右翼」の立場が生まれ、

日本軍の慰安婦を、単に「性奴隷」と呼べば、「左翼」の立場が生まれる。

このように、大日本帝国も、慰安婦問題も、現代の日本人を、右翼か左翼かいずれかの立場に切り分ける、分水嶺のような役割を果たしています。

大日本帝国が、これを単純に肯定したり、否定したりできない複合性や重層性を持つように、日本軍の慰安婦も、「売春婦か、性奴隷か」という単純な二つの選択肢で切り分けることのできない複合性や重層性を抱えた問題であることは、WJFプロジェクトが、制作した動画を通しても、また「慰安婦問題」という記事のカテゴリーにおいても、繰り返し述べてきたことでした。

大日本帝国(明治体制)を、わずかでも掘り下げて考えれば、普遍的なものを志向する「文明」と、特殊なあり方の中に留まろうとする「民族性」という、二つの相反する要素の複合性・重層性を抱えていることに気づくのは容易いことです。

しかし、この「文明」と「民族性」の複合性・重層性は、大日本帝国という特定の時代だけに観察されるものではなく、おそらくは、日本列島に人々が暮らし始めた太古の昔から、遠い未来にわたって紡がれていくであろう、撚(よ)り合う二本の連続した糸のようなものであり、現代を生きる私たちも、この二本の糸の絡み合いの中に置かれていることに思い至ります。

この時代を超えた二本の糸の絡み合いを、私は、「神祇史観」と呼んで、「グローバリズムと神道」という文章の中で浮かび上がらせようとしています。

大日本帝国が、撚り合う二本の糸の一部に過ぎず、現在を生きる私たちが、この糸の長く連続した延長上を今も生きているならば、大日本帝国をこの糸から切り出して、一つの終結した過去として、自分たちとは無関係な異物として対象化し、これをことさら否定してみせることも、これをことさら肯定してみせることも、的外れな姿勢であることがわかります。

このような、自分たちの過去に対して、他人事ごとのようなよそよそしい態度が生まれるのは、「文明」と「民族性」の絡み合いという問題の本質に向かい合おうとしない時なのでしょう。

つまり、「右翼」も、「左翼」も、彼らが、それぞれの立場に帰属する既成の模範解答をどんなにまじめな顔でふりかざそうとも、本当には問題に向き合おうとしない、ふまじめな人たちだということになります。

同じ事は慰安婦問題にも当てはまります。

日本軍の慰安婦問題の根底には、貧困や人身売買という、時代や国を超えてあまねく拡がる問題が横たわっています。

この問題は、現代の世界にも根深くはびこってます。

日本軍の慰安婦のように、特定の国の、特定の時代の現象だけをことさら切り出して対象化したり、特殊化したりして、これを否定したり、これを肯定したりするほど、問題の本質から目をそらした、ふまじめな態度はありません。

慰安婦問題に関して日本を批判する人たちも、この批判を受けて安易に謝罪する人たちも、逆に、慰安婦問題に関してそこに何も問題がなかったように言い張る人たちも、誰も彼も、慰安婦問題に、本当の意味ではまじめに向き合ってはいないということになります。

どんな社会的、歴史的な問題であれ、まじめに向き合うほど、「左翼」や「右翼」といった、既成の立場や考えから自由に解き放たれていくということが生じるはずです。
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No title

水島総の発言の中に、気になる発言がありました。

【日本民族を侮辱した日韓合意】撤回するまで、安倍総理の靖国参拝は遠慮いただきたい[桜H28/1/7]
https://www.youtube.com/watch?v=HsESM7QEZ_I


10分19秒より

水島「たかだかこんな一世代の政治家がああだこうだ言ったからって、おたおたすることはない」

この発言をどう思われますか?
確かに名誉が損なわれても、未来において名誉を回復することはできます。
その意味では、おたおたせずに、挽回の策を講じるべきであるというのは、一理あると思います。
しかし、始めから挽回前提で考えてしまうと、負け癖がついて危険なのでは、とも考えてしまいます。
WJF氏の見解をお聞かせ頂きたく存じます。よろしくお願いします。
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