国家が歴史を語ることの「最終的かつ不可逆的」放棄

もう一つのラチェット規定。
情報戦とは、相手に反日プロパガンダをやめさせること、またそれを除去することではありません。(残念ながらそれは絶対に不可能です。)相手の発する情報や主張の意味を変質させ、無効化させていくこと、そのことが情報戦の目的であり、このゲームの唯一の正しい戦い方です。

(出典: WJFプロジェクト「情報戦とオセロゲーム」2012年12月8日)

国家であれ、民族であれ、組織であれ、個人であれ、自らの来たった歩みを、自らの視点と言葉で物語ること、自らの「神話」を形成しようとすることは、人間にとっての基本的な権利の一部です。

韓国人が、慰安婦問題について物語る「神話」が、日本人にとってどんなに迷惑千万なものであろうとも、彼らがそれを物語る権利を奪おうとしてはなりません。

同様に、私たち日本人が、私たちの視点から、歴史問題を物語ろうとする自由を放棄してはなりません。

下に引用するのは、今から四年前、WJFプロジェクトを立ち上げてから間もない2011年8月15日に、「日本の孤独」と題して記した記事です。

戦後66年間、「アジアを蹂躙した残虐で貪欲な侵略国家」と揶揄されながら「堪え難きを堪え、忍び難きを忍び」黙々と歩いてきた日本。まじめにこつこつ生きて来たおかげで、今では、世界の人々から信頼されていますが、近現代史における日本のあゆみは、やはり孤独なものだったと思います。いまだに多くの人々から誤解をされている国、日本。もしかすると日本人自身によっても十分に理解されていないかもしれない国、日本。

日本が理解されにくいのは、日本という国が、諸外国のみならず、中国、朝鮮といった近隣諸国とも、ある意味で隔絶した歴史的文脈を生きて来たことが一つの原因として考えられます。歴史とは本来的には、国家や民族や集団の自己認識を支える「物語」なのですから、他国と異なる独立した文脈を生きて来たのであれば、その軌跡は、外部から押し付けられた文脈ではなくて、それ自身の文脈に即して解釈されなくてはなりません。しかし、日本人が「自己認識のための物語」としての歴史を編もうとすると、その作業を「歴史歪曲」と呼んで、かつて日本を夷狄として蔑んでいた中国や朝鮮(韓国)といった中華体制に組していた国々が異を唱えてきます。彼らは彼ら自身の歴史的文脈に従って、私たち日本人が近現代史を解釈するように求めてきたし、現在の日本の学校における歴史教育でも、中国・朝鮮側からの視点がそのまま歴史の真実であるかのごとくちりばめられています。その結果、現在学校で教えられる歴史は、一つの歴史的文脈によって有機的にまとめられた「物語」という機能を失い、ばらばらに切り刻まれた「無味乾燥な暗記事項の集積物」になってしまっているのではないでしょうか。

日本人が他者から理解を求める以前に、日本人自身が、自分たちの自己認識を取り戻し、一貫して自分たちの文脈に従って編まれた「物語」としての歴史を回復する必要があります。他者との対話とは、私たちが相手の文脈の中に唯々諾々と取り込まれることではなく、相手を自分たちの文脈の中に取り込もうとすることでもなく、それぞれの立ち位置から見えるものをあるがままに披瀝しあう以上のことではないのかもしれません。

(出典: WJFプロジェクト「日本の孤独」2011年8月15日)

安倍支持者の中には、韓国人がこれ以上、慰安婦問題に関する反日プロパガンダを堂々と展開できなくなるからという理由で、今回の日韓合意を歓迎する人々もいますが、彼らは、韓国政府のみならず、日本政府も、「最終的かつ不可逆的」に、自らの視座と言葉で、歴史を物語る自由を放棄してしまった事実から目をそらしています。

今回、日本政府と韓国政府が、アメリカの主導の下、慰安婦問題に関する「最終的かつ不可逆的」解決に至ったことの意味は、日本と韓国が、少なくとも政府による公式な立場としては、「国家や民族や集団の自己認識を支える『物語』」として慰安婦問題のような歴史問題を語る権利を、「最終的かつ不可逆的」に放棄したということです。

そして、日本と韓国が、「国家や民族や集団の自己認識を支える『物語』」として歴史問題を語る権利を、「最終的かつ不可逆的」に放棄してしまったことの意味は、日本と韓国が、独立した国家としてのあり方を、また一つ、「最終的かつ不可逆的」に喪失したことに他なりません。

今回の日韓の合意は、独自の「神話」を編もうとする国家の自存と独立を毀損し、超国家的なグローバルな秩序に両国を組み込んでいくという点で、TPPや安保法制の問題と、本質においては同じものです。

2013年9月に、安倍晋三がニューヨーク証券取引所で語った通り、「国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去った」のだとするならば、その必然的な帰結として、「歴史問題にこだわる時代も過ぎ去った」のです。

TPP、安保法制、今回の日韓合意は、「国境や国籍にこだわらない時代」を「最終的かつ不可逆的」に到来させるためのものとして同列に語られるべきものであり、安保法案には反対するが、日韓合意に賛意を示す「左翼」も、日韓合意に反対するが、安保法案には賛成する「右翼」も、共に、日本や韓国が目下置かれている状況の本質を理解しているとは言えません。

参考記事: WJFプロジェクト「離脱すること」と「組み込むこと」(2014年1月13日)
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記事の動画化

この記事を動画化しました。

国家が歴史を語ることの「最終的かつ不可逆的」放棄
http://www.nicovideo.jp/watch/sm27973616
https://www.youtube.com/watch?v=Ap5-5budO1M

今年も動画投稿の活動を続けます。記事の動画化だけではなく、よしふる完璧自作動画も投稿していければと考えています。

「日韓合意」での慰安婦問題謝罪は自民党とアメリカとの合作!だという証拠と周辺で蠢く闇の日本破壊勢力

「日韓合意」での慰安婦問題謝罪は自民党とアメリカとの合作!だという証拠と周辺で蠢く闇の日本破壊勢力
http://soumoukukki.at.webry.info/201512/article_1.html

No title

に賛同する日本人が少なくないことに愕然としています。気違い左翼が賛同することはある程度の予想はしていましたが、嫌韓とか愛国とか普段言っている人にまで賛同者がいます。私は安倍よりも、むしろそういった日本人に絶望しました。裏にアメリカの意向があったのはそうでしょう。しかし根拠のない嘘で、名誉や誇りを失っても平気な人達とは一体何者なのでしょう。私には理解できません。

No title

保守気取りの愚か者が「軍の関与と言っているだけで軍の強制性は認めていないから問題ない」などとぬかしているが、政府が村山や河野の談話を否定しなかったこと、会見で謝罪していることと海外の「sex slave」などの表現が含まれる報道に対して一切抗議していないことだけでも完全に韓国の捏造を認めていることが分かっていない。
このままだと韓国の不当要求がエスカレートし、アメリカの圧力で更に捏造を肯定させられることになる可能性が高いが、保守気取りの愚か者は「アメリカの圧力があったから仕方がない」「他に支持できる政党がないから仕方ない」などと言って自己正当化して現実逃避を続けるだろう。

No title

今回の合意で韓国が黙る様になると、そう言っている人が多い様に感じますが、縛られたのはむしろ日本であると私も感じます。
日本と韓国の歴史問題は、韓国の過剰な被害者意識を正さなければ絶対に無くなりません。
その被害者という立場から、両国内に多大な利権を生んでしまったのですから、事実の棚上げは一番やってはいけないことでした。
私もこれまで安倍自民党を応援する立場でした。でも今回の合意で、日本政府として事実を追求するつもりが無いのだと確信して、失望して色々な意見を調べて、そしてここに辿り着きました。
特別永住者資格の優遇など、自分の知らない事を知って、少し戸惑っています。
まだ知識が不十分で、安倍支持からすぐに反安倍とはなりづらいですが、一般人としての私としてはただ、先人の取った行動を捻じ曲げずに後世に伝えて欲しいと思います。
でないとあまりに不憫です。ご先祖様も、私達も、そして次代の子どもたちにもです。
長文失礼しました。
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