「神州の泉」高橋博彦氏を偲んで
揮発しつつある郵貯と農協の巨大資産。
「アメリカの政府機関からのアクセスがあった」という昨年9月25日の記事を最後に、記事が更新されなくなった「神州の泉」。
今年の年頭にはブログ自体が閉鎖されていましたが、筆者の高橋博彦氏が1月26日に逝去されたそうです。
個人的なお付き合いがあったわけではありませんが、高橋さんは「神州の泉」のブログ上で、WJFプロジェクトを記事に取り上げてくださったこともありました。
「神州の泉」をご存じない方のために、高橋氏の死を私たちに伝えた響堂雪乃氏のブログ、「独りファシズム」が、高橋氏が続けてこられた言論活動について的確な文章で紹介していますので、引用させていただきます。
今は削除されてしまっている「神州の泉」のブログから、昨年8月3日に書かれた記事が、「阿修羅」というサイトに転載されて残っていますので、高橋さんを偲んで、こちらでも紹介させていただきます。
高橋さんが鳴らした警鐘に耳を傾けましょう。
小泉政権への国民の熱狂的な支持の中成立した「郵政民営化法」は、日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の2017年までの株式上場と完全民営化を定めています。(追記: 2012年の改正によりゆうちょ銀行、かんぽ生命の株式売却は無期限化されています。)
報道によれば、今年2015年の秋に、これら三社の株式上場がなされるとのことです。(出典)
10%への消費税増税は、一年半延期されて、2017年4月からの実施がほぼ確定していますから、高橋氏の指摘のとおり「10%への消費税増税前の郵政の株式上場」はそのまま実現する形になります。
ゆうちょ銀行とかんぽ生命は、昨今は目減りしていますが、数年前まで総資産額で300兆円を超える文字通り世界最大の金融機関であり、明治時代より日本人が営々と積み上げてきたこの巨大資産は、かつては国債引き受けによる「財政投融資」の資金に充てられ、国内の公共事業のために政府によって投資されていました。
つまり、日本人が働いて積み上げてきた資産が、日本人の手によって、日本人のための社会資本形成のために使われ、そうして蓄積された社会資本がさらに日本人の生産活動を助けるという、お金や財が国の内部に循環して日本全体を豊かにしていく体系が確立されていたのですが、この体系を破壊したのが、90年代からの「構造改革」であり、その筆頭に挙げられるのが、郵政民営化法を可決成立させた小泉構造改革だったわけです。
そして、現在の安倍政権は、小泉政権を上回る規模の「構造改革」(という名の売国と国家破壊)を着々と実現させつつあり、小泉政権が始めた郵政民営化の最後の画竜点睛が、ついに安倍政権下で打たれようとしています。
日本人がこつこつと貯めてきたお金は、もはや日本人の手によって、日本人のために、国内で投資されるのではなく、グローバル投資家たちの手によって、彼らの金儲けのために、地球規模に拡散していくのです。
現在、安倍政権は、JA全中(全国農業協同組合中央会)の解体を目論んでいますが、その目的の一つは、郵政民営化の目的と同じものです。
つまり、郵便貯金の次に、彼らが目をつけているのが農林中央金庫(JAバンク)の巨大資産です。
高橋氏の遺志を受け継いで、私たちも我慢強く、真実を語り続けていきたいものです。
最後になりましたが、高橋博彦氏のご冥福をお祈り申し上げます。
今年の年頭にはブログ自体が閉鎖されていましたが、筆者の高橋博彦氏が1月26日に逝去されたそうです。
個人的なお付き合いがあったわけではありませんが、高橋さんは「神州の泉」のブログ上で、WJFプロジェクトを記事に取り上げてくださったこともありました。
「神州の泉」をご存じない方のために、高橋氏の死を私たちに伝えた響堂雪乃氏のブログ、「独りファシズム」が、高橋氏が続けてこられた言論活動について的確な文章で紹介していますので、引用させていただきます。
ブログ「神州の泉」の主宰者であり、”国家は「有罪(えんざい)」をこうして創る”の共著者である高橋博彦氏が1月26日に逝去されました。
僕は種々の圧力により言論世界から退場を強いられ、公共での発言を封じられている身なのですが、高橋氏の死に際し追悼文すら綴ることができないのであれば、それはもはや人間の構造を解かれた洞(うろ)にも等しいのであり、ゆえに本稿が文字禍を招くとしても甘んじてそれを受け入れ、むしろ自身の存在証明として故人とその遺志について語りたいと思うのです。
高橋氏との交流はおおよそ3年にわたったのですが、互いにネットを通じて仲間や賛同者を募ろうなどという思惑もなく、まして何らかのイデオロギーを共有する同志的連帯感で繋がっていたわけでもありません。むしろ僕は右でも左でもなく、両者を止揚するポジションであるのに対し、高橋氏は鮮明に保守を打ち出し、つまり断固として右翼を自称したのですが、その姿勢には全くぶれがなかったと思います。
そもそも右翼の定義とは、伝統文化と重要国土の護持および国家企業と民族共同体の保守であるわけです。しかし論壇誌や右傾言論人が賛美する自民党政権とは、アメリカ公文書館の資料でも明記されているとおり、アメリカを本拠地とする多国籍企業の利潤誘導のため資金投入された傀儡政権であり、その前提においてこの国の保守とはいわば経済植民地のガジェットであり、つまり彼らは外国資本にカネをもらい売国を幇助する「偽装保守」に過ぎないわけです。
席巻するジンゴイズム(狂信的対外強硬主義)やエスノセントリズム(自民族だけが高潔であるという思想)あるいはゼノフォビア(排外主義思想)などの時代錯誤な思潮や、過激化する朝鮮民族への差別は決して自然発生したものではなく、原発事故や戦争国家構想など重大な内政問題に対する国民の注意を反らすために仕組まれた現代のボクロム(ロマノフ王朝が権力維持のため実行した人種差別政策)なのです。
直言するならば、この国の右翼とは自衛隊を米軍の下部組織として再編成し、派兵や徴兵さらに武器輸出の世論合意を取り付け、終局的にコングロマリット(軍需、金融、エネルギーの複合企業)の利潤を最大化する装置としてビルトインされているのであり、すなわち人間のクズなのです。
かくも論壇が買弁(売国奴)集団と成り下がった時代において、高橋氏は最後の国士であり真の右翼であったと言えるでしょう。彼は保守というポジションを堅持しながらも決して自民族至上主義に堕ちることはなく、むしろ民族体系を突き放して凝視する冷眼を携え、現象群をアカデミズムから考察しようと努めたのであり、だからこそ彼の言論はイデオロギーを超越して説得力に溢れ、人の心を揺さぶるものであったと思うのです。
高橋氏がもっとも憂慮し訴求していたことは国家の植民地化でした。小泉政権を起点とする一連の改革とは日本国のプランテーション化を目論むものであり、すでにフリードマン(超搾取型経済主義)理論に基づき資本規制の撤廃(主要企業の外資化)、労働者の非正規化、多国籍企業の優遇税制と補助金の強化、医療・教育・福祉・年金の切捨て、フラット税制(消費税などの植民地税制)が達成されています。そしてついにはTPP批准と経済特区により商業条約が国家憲法を超越するという倒錯であり、実質として我々は主権を剥奪され奴隷民族に転落するのです。
(出典: 「独りファシズム」2015年1月30日)
今は削除されてしまっている「神州の泉」のブログから、昨年8月3日に書かれた記事が、「阿修羅」というサイトに転載されて残っていますので、高橋さんを偲んで、こちらでも紹介させていただきます。
高橋さんが鳴らした警鐘に耳を傾けましょう。
消費税率(10%)引き上げ前に郵政株式の上場が画策されている(神州の泉)
http://shimotazawa.cocolog-wbs.com/akebi/2014/08/post-2b50.html
2014年8月3日
消費税の税率が現在の8%から10%に引き上げられる予定は来年2015年の10月だそうである。日本郵政の西室泰三社長はその前に、日本郵政株式の上場を果たしたい意向を述べている。
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郵政社長、株式上場「消費税10%の前に」 金融2社は未定と説明(2014/6/25 17:37)
日本郵政の西室泰三社長は(2014年6月)25日午後の記者会見で、株式上場について「少なくとも消費税がもう2%上がる前までの段階でできることはした方がいい」と述べた。消費税率の10%への引き上げは2015年10月の予定。西室氏はそれまでは景気が下振れしにくいとし「正確には決まっていないが、マーケットの状況から考えるとそう思わざるを得ない」と述べた。
傘下のゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の株式上場時期に関しては「まだ全く決まっていない」と説明した。〔日経QUICKニュース(NQN)〕
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFL250WN_V20C14A6000000/
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上記にあるように、肝心のゆうちょ銀行とかんぽ生命保険会社は、上場時期にかんしてはまだ未定だとしているものの、非常に恐ろしい事態が進行しつつある。
かんぽ生命の総資産額は、確か2010年で100兆円を割っているが2013年3月31日時点では90兆4623億円(ダイヤモンド就活ナビ資料)になっている。一方ゆうちょ銀行は2012年9月末には、貯金総額で175兆7967億円である。
日本郵政が管理するこれら二つの巨大金融会社の総額は約266兆円になっている。郵政民営化がスタートした2007年10月当時の総額340兆円に比べれば74兆円も目減りしてしまったが、それでも266兆円の額は大きい。
今、郵政が保有するこの莫大な金融資産が、ゴールドマンサックスやモルガン・スタンレーなど、世界の超巨大投資銀行群(バルジ・ブラケット)に狙われているのだ。日本郵政の株式がこれらハゲタカである巨大金融会社に買われ、その経営権を支配されてしまえば、日本郵政が支配するゆうちょ銀行とかんぽ生命の総資産は、日本国民には何の利益ももたらさずに、わずか数兆円で彼らの手中にわたってしまうことになる。
日本郵政株式の総額は12兆4000億円だから、バルジ・ブラケットのどこかが、半分の6兆2000億円を少し超える額で郵政株を取得すれば、かんぽとゆうちょの経営権は完全に彼らの手に渡るのである。そうなれば国民の大事な資産である266兆円は日本国から完全に揮発してしまうことになる。それが郵政民営化の当初からの目的なのである。
日本人はUSTRの甘言にだまされて、この売国民営化を自ら幇助したわけである。小泉純一郎という外道宰相が旗を振り、竹中平蔵という外道経済学者が具体的な設計をして、充分な国民的議論を経ないままに、短期間で郵政民営化は実行されてしまった。
これは日本国民に対する重大な犯罪である。これに待ったをかけるべく、綿貫民輔氏や亀井静香氏らが必死になって抵抗したが、有象無象の圧力があって彼らは抵抗戦線からやむなく離脱した状況になっている。
そのために勢いを増した外国のハゲタカ勢力は、野田や安倍の売国政権を動かして日本郵政社長の首をすげ替えている。日本郵政社長のすげ替えは、ハゲタカ勢力にとっては当初の目的を遂行するために必ず通らなければならない関門だった。
2012年4月の郵政民営化改正法成立辺りから、日本郵政はタイアップしていた日本生命と共同でかんぽ生命によるがん保険など「第三分野」(医療保険)への進出を模索し、両社で新商品のがん保険を市場に出せる準備が整っていた。
御存知のように保険の第三分野はアメリカの保険会社に占有されていて、日本の保険会社や被保険者である日本人が、自国の保険会社にその分野への進出を望んでも、アメリカの圧力によって跳ね返されてきた。ここには米国債を買ってもそれを決して売ることができない圧力と同様な力が働いている。まさに宗主国と属国(あるいはプランテーション国家)の不均衡状態なのである。
2012年4月、かんぽ生命と日本生命がこの分野への進出を模索して共同で新商品を開発していた。ところが翌月の5月に、ウェンディ・カトラー米国通商代表部(USTR)代表補が訪韓後に突然来日して、日本郵政の斉藤次郎社長(当時)、外務省高官、総務省高官と話し合っている。
東谷暁氏の推察によると、このとき、カトラー氏はギリギリと詰め寄って、日本郵政とニッセイの「がん保険事業共同進出」を止めるように斉藤社長を恫喝した可能性が高いと言う。その結果何が起きたのか。
なんと、かんぽ生命と日本生命の5年間の親密な協力関係はいきなりご破算にされ、その代わり、米国大手保険会社・アメリカンファミリー生命保険(アフラック)との業務提携の強化を行った。提携主力相手をアフラック一本に絞ったのである。
この経緯を簡単に示す。
2009年10月、政権交代後まもなく、当時の亀井静香郵政・金融担相は小沢一郎幹事長と相談して元大蔵事務次官の斎藤次郎氏を後任社長に抜擢した。同時に大蔵省出身の坂篤郎氏が新社長の座に就いている。その後、斎藤氏は自公与党政権の隆盛を見越して2012年12月、自ら取締役を降板した。ここで、坂篤郎副社長が新社長の座に就いた。
ビジネスジャーナルを参照すると、坂圧篤郎氏は新社長に就任早々、竹中平蔵色が濃い役員たちを次々に郵政から追放した。この坂篤郎という人物は亀井静香氏らと同様に、日本郵政を外資から防衛するという志に徹していたわけである。
竹中平蔵を経済の羅針盤に抜擢した超売国政権の安倍政権がこの状況を看過するはずもなかった。自民党に政権が戻った直後、菅義偉(すが よしひで)・官房長官が坂社長の退任に強くこだわったのは、坂氏が、郵政民営化見直し法の成立に向け、各党間の調整で中心的な役割を担ったからだという。グローバル資本の完全なパペットと化している安倍政権は、坂氏の続投を断じて許すはずもなかった。
2013年6月下旬の日本郵政定時株主総会で坂篤郎氏の退任が正式に決定され、後任に東芝相談役の西室泰三氏が決まった。このとき坂氏が追放されずに日本郵政の顧問格に収まったのは、郵政内部の強い抵抗と、追放するというあまりにも露骨なやり方が世間の耳目を引いて、郵政法案見直しが再燃することを政府が恐れたのだろう。(坂氏は2014年3月5日に顧問退任。)
超親米派の西室泰三氏は小泉政権時代、竹中平蔵氏とタイアップして経済財政諮問会議の黒幕として構造改革と郵政民営化を差配していた人物だった可能性が濃い。だから、日本郵政の社長にこの人物が就いたということは、アフラックに日本のがん保険領域を制圧されたということだけではなく、今後、郵政全域がアメリカ・グローバル資本に掌握されていく橋頭保になったことを意味している。
今後、西室社長がためらわずにやることは、2015年の日本郵政の株式上場である。そこに待ち構えているのは、世界最大級の投資銀行「ゴールドマン・サックス」であることはほぼ間違いない。
これまでの安倍政権の暴走ぶりを見ていると、この株式上場を消費税が10%に引き上げられる前に行いたいという、西室社長の強い意思が実現されてしまう可能性が高い。国民の大事な共有財産がハゲタカ資本に分捕られてしまう時期が次第に迫っている。
小泉政権への国民の熱狂的な支持の中成立した「郵政民営化法」は、日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の2017年までの株式上場と完全民営化を定めています。(追記: 2012年の改正によりゆうちょ銀行、かんぽ生命の株式売却は無期限化されています。)
報道によれば、今年2015年の秋に、これら三社の株式上場がなされるとのことです。(出典)
10%への消費税増税は、一年半延期されて、2017年4月からの実施がほぼ確定していますから、高橋氏の指摘のとおり「10%への消費税増税前の郵政の株式上場」はそのまま実現する形になります。
ゆうちょ銀行とかんぽ生命は、昨今は目減りしていますが、数年前まで総資産額で300兆円を超える文字通り世界最大の金融機関であり、明治時代より日本人が営々と積み上げてきたこの巨大資産は、かつては国債引き受けによる「財政投融資」の資金に充てられ、国内の公共事業のために政府によって投資されていました。
つまり、日本人が働いて積み上げてきた資産が、日本人の手によって、日本人のための社会資本形成のために使われ、そうして蓄積された社会資本がさらに日本人の生産活動を助けるという、お金や財が国の内部に循環して日本全体を豊かにしていく体系が確立されていたのですが、この体系を破壊したのが、90年代からの「構造改革」であり、その筆頭に挙げられるのが、郵政民営化法を可決成立させた小泉構造改革だったわけです。
そして、現在の安倍政権は、小泉政権を上回る規模の「構造改革」(という名の売国と国家破壊)を着々と実現させつつあり、小泉政権が始めた郵政民営化の最後の画竜点睛が、ついに安倍政権下で打たれようとしています。
日本人がこつこつと貯めてきたお金は、もはや日本人の手によって、日本人のために、国内で投資されるのではなく、グローバル投資家たちの手によって、彼らの金儲けのために、地球規模に拡散していくのです。
現在、安倍政権は、JA全中(全国農業協同組合中央会)の解体を目論んでいますが、その目的の一つは、郵政民営化の目的と同じものです。
つまり、郵便貯金の次に、彼らが目をつけているのが農林中央金庫(JAバンク)の巨大資産です。
農協改革 安倍官邸の狙いは約400兆円の“農協マネー”
いったい誰のため、何のための改革なのか――。安倍晋三首相(60)が前のめりで進める農協改革に、農協関係者のみならず、自民党議員からも批判が噴出している。そこには隠された狙いがある。約400兆円の農協マネーの奪い合いだ。日米両政府の思惑に、日本の農村は食い物にされるのか。
農協は、金融サービスを提供する信用事業(JAバンク)と、民間の保険にあたる共済事業(JA共済)を展開している。農協は農産物の販売・購買などの赤字事業に、信用・共済事業の黒字で補てんしている。
その保有資産は莫大で、JA共済の契約保有高は約300兆円。組合員に事業融資や住宅ローンなどを提供するJAバンクの貯金残高は約90兆円で、日本の個人の預貯金残高に占める割合は10.5%にのぼる(2012年度末)。これは、三菱東京UFJ銀行よりも高い比率だ。
政府は、このカネに手を伸ばそうとしている。政府の諮問機関である「規制改革会議」は昨年11月、「農業協同組合の見直しに関する意見」という文書を発表。貯金や共済の利用制限について「(一般の人も加入できる)准組合員利用量の規制は、数値基準も明確に」と書いている。同会議の農業ワーキング・グループは昨年5月にも意見を発表していて、そこでは「(農家限定の)正組合員の事業利用の2分の1を越えてはならない」と提言している。
実は、これが農協の信用・共済事業を弱体化させる核心という。大妻女子大学の田代洋一教授(農業経済学)は、こう解説する。
「たとえば、准組合員がJAバンクで利用できる貯金総額が正組合員の50%以下に制限されると、50%を超える分の貯金額は准組合員に返却しなければなりません。経営が不安定になり、地域農協に与える打撃は計り知れない」
さらに、米国も農協の信用・共済事業を狙っている。郵便貯金・簡易保険の民営化に続き、再び日本人の資産が標的になっているのだ。
昨年6月、在日米国商工会議所(ACCJ)が、JAグループの組織改革について意見書をまとめた。その内容は規制改革会議の活動を高く評価するもので、結論には「日本政府および規制改革会議と緊密に連携」していくと書かれている。
にわかに信じがたい話だが、これは両者が発表している意見を比較すれば一目瞭然だ。
注目すべきは、米国の規制見直し要求にある「組合員の利用高の一定の割合までは員外利用が認められていること」という項目だ。「員外利用」とは、農協に出資している正・准組合員ではなくても、農協のサービスが利用できる枠組みのこと。信用・共済事業を中心に、各農協ごとに20~25%まで認められている。これが特別待遇にあたるとして、制度撤廃を求められている。
しかしながら、規制改革会議の意見にあるのは先述した准組合員への利用制限だけ。員外利用の禁止は書かれていない。ここにカラクリがある。
「まず、准組合員に利用制限がかけられると、正・准組合員の貯金総額が減ります。そうなると当然、員外利用の比率が自動的に高まってしまう。それが25%を超えれば、員外利用者に貯金を返却しないといけない。准組合員の利用量規制をすれば、員外利用者にも同時に制限できるのです」(田代教授)
いま、農協の正組合員は461万人、准組合員は536万人(12年度)。准組合員の利用制限が2分の1になると、農協は単純計算で准組合員約305万人分の信用・共済事業の資産を扱えなくなる。JAグループの関係者は言う。
「准組合員に返却された貯金などは、国内外の金融機関や保険会社にとって顧客獲得の商機になる。信用・共済事業の規制改革は、これまでも繰り返し意見が出されていたし、農協改革の最大の狙いもそこにあるのでしょう」
今回の農協改革でも、規制改革会議の意見を受けて准組合員の利用制限が論点に入っている。現場無視の提案にベテラン議員は、
「規制改革会議が神様なら、国会議員はいらない」
と不快感を隠さない。
(出典: 週刊朝日 2015年2月6日号)
高橋氏の遺志を受け継いで、私たちも我慢強く、真実を語り続けていきたいものです。
最後になりましたが、高橋博彦氏のご冥福をお祈り申し上げます。
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